INTERVIEW(2)――搾り出すことで生み出されるもの
搾り出すことで生み出されるもの
――他にもボツになったアイデアってありました?
MATSUMURA「善と悪とか、男と女とか(笑)」
ANZAI「そうそう、いろいろあったね(笑)」
MATSUMURA「アンダーグラウンドとオーヴァーグラウンドとか。いろいろ考えたけど、結果、2枚のカラーが違うというより、2枚とも俺ららしいものでいいんじゃないかなって」
――それは曲を作りはじめる前のことでした?
ANZAI「そうですね」
――対立する2つの要素を見せるというコンセプトだったら、このアルバムにはならないですよね。どちらも変わらずLAST ALLIANCEというバンドを表している。
MATSUMURA「ですね。デモを上げたタイミングがほとんどいっしょなんです。これをやろうといったあとに、4月に15曲を録って、6月に15曲のプリプロを録ったんですけど。その手前にももっとたくさん曲を作ってチョイスして。いままでって、12曲のアルバムを作ろうとした時には、ANZAIは6曲で俺は6曲という、そういう形でしか作ってなかったんです。それを壊そうというのはありました。もっと出して、いっぱいデモを作ることによって、搾り出すことで生み出されるものを見てみようという」
――曲をたくさん作ってそこから選ぶことで、曲作りはどういうふうに変わりました?
MATSUMURA「それまでは、自分で感じたものを6曲という枠のなかで出すだけだったんです。結果バランスは良かったんですけど。今回は佐野が入って3人でやってるんで。まずは他のメンバーに納得してもらうものを作ろうというのがありました」
ANZAI「俺は、逆に全然変わってないですね。ずっと同じです。たくさん作ろうとしても、自分のなかで相応の数しか出てこないし。頑固にそうしてるんじゃなくて、これでいいんじゃないかという匙加減でやってますね」
コンポーザー3人の個性
――いまのLAST ALLIANCEには3人のコンポーザーがいるわけですけれども、アルバムのなかでもそれぞれの曲のバランスが取れているわけで。ということは、それぞれ違うピースとして全体像のなかにハマっているということだと思うんです。それはどういうものだと捉えています?
MATSUMURA「ざっくり言えば、サノゴ(佐野)はアメリカン・ロックからラウド系がやりたいんだろうなというのが、ひしひしと伝わる。ANZAIは前から変わってなくて。俺もそこまで変わってないけど、ライヴも最近は硬質なバンド、いわゆる歌モノよりもパンク系とかラウド系のバンドと対バンしてきたので、そういう、より硬質なものにアレンジも変えたほうがいいんじゃないかと思ってはいますね」
ANZAI「まあ、まっちゃん(MATSUMURA)は変わってないですね」
MATSUMURA「サノゴの曲は、ギタリストが作る曲って感じかな。リフ重視というか、コード感にもこだわってる」
ANZAI「たぶん、僕とまっちゃんは曲作りというものに対してずっとやってきたのがあって、サノゴは本腰入れてそれを始めたのが最近で。僕とまっちゃんは、持ってくるネタも少し古いんですよね。サノゴはそれより新しいアイデアもあるし、モダンなアメリカン・ロックとかラウド系のテイストとかリズムを採り入れている感じがあって。2人のオールド・スクールなフレーズや歌詞の感じに、新しい空気が混ざってきた感じはあるかな。いまの感性を持った人にもストレートに伝わるようになってきている。それをLAST ALLIANCEとして消化して、LAST ALLIANCEになればいいかなって感じはあるんですね」
――ANZAIさんの2ビートで速いパンクもバンドの核だし、MATSUMURAさんの作る歌謡性を持ったメロディーラインとハードなサウンドの融合も同じくバンドの核だし、非常に多面体なバンドだと思うんですよね。実際、作っている側としてもそういうものになったという実感はありますか?
MATSUMURA「なったんじゃないですかね。ヴァリエーションはいままでよりも増えたし、ヴァラエティーに富んだアルバムになるだろうなとは思ってました」