U-Key zoneの厳選プロデュース・ワーク――(1)
Heartsdales 『Ultra Foxy』 (2006)
VERBALの導きでデビューしたラップ・デュオのラスト・アルバム。そして、彼女らの事務所に送っていたデモが本人たちの耳に留まり、ここで2曲のトラックを提供したのがUKZのプロとしての初仕事となる。イントロ的な小品“Rum Interlude/Classical Barbie”とそれに続く“My Melody”は、いずれもファットなピアノ・ループを前に出したもので、UKZの出自を窺わせる美しい出来映えだ。
山田優 『MYUSIC』 (2008)
人気モデル/女優が残した唯一のアルバムながら、沖縄アクターズスクール出身という主役のルーツも作用した本格志向の作りは余技に終わらず。前年のシングル“EYES ON ME”で大抜擢されたUKZにとっては、そのままアルバムの半数で作曲/トラック制作を任されるという躍進作。メランコリックな泣き節の“little raindrop”がポップで良いが、クラシカルなピアノ演奏とダークなクランクを融和させた“Outro”に作り手の主張を見る。
Clench & Blistah 『Clench & Blistah』 (2008)
VERBALが率いたMIC BANDITZの構成員で、現在はカタカナに改名して活躍中のラップ・デュオ。このファースト・アルバム発表前後はUKZも頻繁に絡んでいた。特にここに収められたイントロ的な“予兆”とそれに続く“ゲッ! 跳んだマイク”はダジャレ的な曲名に反してなかなかの聴きモノ。クラップを抜き差ししてバウンシーに疾走するビートと男臭いラップの相性も良い。
宏実 『RAINBOW』 (2009)
『Advent of UKZ』にも起用した彼女とは、デビュー作『True Colors』(2008年)所収の名曲“Hate U”を皮切りに、最新作『MAGIC』まで欠かさず関わってきている間柄。詞曲は彼女が自作するためか通常のUKZ仕事とは異なる化学反応が生まれているフシもあり、特にこの傑作での手合わせは、ブーミーなクランク調の逸曲“YES”からオリエンタルな音色使いの光る絶品のスロウ“碇星”まで、引き出しの多いアレンジがいずれも大成功に!
SWEET BLACK 『SWEET BLACK feat.MAKI GOTO』 (2009)
活動休止状態だったゴマキが、本格復帰に先駆けてハウスやR&Bなど多様な音楽的チャレンジに取り組んだプロジェクト作品。UKZは“Mine”の作曲とトラック制作を担当し、極太なベースと賑々しいクラップで煽り立てるダンスホール・レゲエに仕上げている。必死で食らいつく主役の歌いっぷり以上に、客演したKEN THE 390のフレキシブルなラップが映えるカッコ良い一曲だ。
安室奈美恵 『PAST < FUTURE』 (2009)
表題が示唆するように女王が攻めまくった本作にあって、一時の安らぎを感じさせる唯一のバラードとして収められたのが“The Meaning Of Us”。歌詞担当のMOMO"mocha"N.と共同でコンポーズを手掛けたUKZは、作中での役割とリリックの内容を弁えたようにシンプルな意匠を配し、パーソナルな歌世界を穏やかに聴かせることに徹している。同年の青山テルマ“忘れないよ”に続いてmochAとのコンビが奏功した記念碑的な逸曲だ。
黒木メイサ 『ATTITUDE』 (2010)
「一枚丸ごと自分の曲が並ぶとこうなるんだと思いました。単純に嬉しかったです」とUKZ本人も語る、彼にとってキャリア初の全曲プロデュース作品。歌手デビュー時からメイサを手掛けてきたUKZだが、このミニ・アルバムでは全編で相棒のMOMO"mocha"N.とコンビを組み、歌い手のクールな表情を活写せんとするアーバンな手捌きを披露。トータルのバランスにも配慮した力作に仕上げている。
BRIGHT 『real』 (2010)
親しみやすさを忘れずに実力派のハーモニーを聴かせる4人組グループ。“いつまでも...(Happy Winter Version)”(08年)のリアレンジや“You Were Mine”(09年)のプロデュースを担ってきたUKZは、このアルバムでも先行シングル“言葉にできなくて”を含む4曲をプロデュース。なかでも“Dance With Us”は電子音が飛び交う緻密な意匠を野太いビートとキャッチーな旋律が貫通したUKZ印のバウンシーなアップで最高!
BoA 『IDENTITY』 (2010)
倖田來未の佳曲“No Way”などビッグネームとの大仕事が続いたこの時期のUKZにあって、隠れ人気曲とも言えるのが本作に収録された“ネコラブ”。アレンジには関与していないものの、抑制を効かせたクール&シンプルなメロディーメイクの妙が味わえ、どことなく韓国/US作品に挑む時のBoAのような雰囲気に仕上がっているのが興味深い。BoA自身のユーモラスで辛辣なリリックも聴きどころ。