U-Key zoneの厳選プロデュース・ワーク――(2)
mochA 『WARNING』 (2010)
今回の『Advent of UKZ』にも登場するmochAは、UKZ曲で作詞を手掛けることの多いMOMO"mocha"N.の、シンガーとしての名義。前年の配信版に2曲を加えたこのデビュー作もUKZが全曲を手掛け、音や歌の意匠に加えて言葉の響きもすべて渾然一体となった一段上の世界を作り上げている。「その時点での自分の力を120%注げて充実した満足感がありました。1人でも多くの人に聴いてほしいです」とUKZ自身も語る、格好良すぎる名曲集。
三浦大知 “The Answer” (2010)
前年のアルバム『Who's The Man』での“Stay with me”に続き、こちらのシングルでは表題曲のプロデューサーに起用。ここ最近のUKZが得意とするドラマティックな雄大チューンの雛形とも言える逸曲で、「自分のなかの良質なメロディーとクールなトラックがわかりやすく両立できている」と、本人も気に入っているようだ。そのままMOMO "mocha" N.とのコンビで手掛けた次のシングル“Lullaby”では、バラードに姿を変えながらも同じ方向性が追求されている。
ICONIQ 『Light Ahead』 (2010)
同年に華々しくデビューを飾ったシンガーの変則的なミニ・アルバムで、UKZは表題曲をプロデュース。MOMO "mocha" N.のペンが綴る繊細な心の動きを、起伏の少ないメロディーと音数を絞ったトラックでも表現したような、上品でビタースウィートな翳りのあるR&Bチューンになっている。不思議な中毒性のある隠れた名曲だ。
黒木メイサ 『MAGAZINE』 (2011)
別掲の『ATTITUDE』以降もシングルのカップリング曲を手掛けてきたUKZは、この初のフル・アルバムでも4曲をプロデュース。いわゆるエレクトロR&Bとは似て非なる電化つんのめりアップの“As I Am”は流石の相性の良さ。一方では本人の歌の成長もあって、ポップにオーガナイズされた哀感が快い“Say Good Night☆”、90年代ムードも漂う折り目正しいスロウ“Somewhere...”といった繊細な歌い込み路線も今回は際立って素晴らしい。
為岡そのみ 『DRAMATIC』 (2011)
前作『MOVIN' ON』収録の“I wanna know your feelin'”でアレンジにUKZを迎えて以来、『Advent of UKZ』の参加に至るまで交流を深めているシンガー・ソングライターの2作目。UKZは2曲をプロデュースし、特に煌びやかなシンセとコーラスが分厚く連なる自身のゾーンへ主役を招き入れた“FAITH”は鮮烈。一方、オリエンタルな雰囲気をシンプルなアレンジで支えた“告白”は為岡の色が強く、互いの持ち味が活かされた印象だ。
露崎春女 『Now Playing』 (2011)
日本産R&Bのオリジネイターが3年ぶりに放った意欲的な最新アルバム。Nao'ymtやROOT SOULら後進の才能を積極的に登用したカラフルな意匠が開放感に溢れた歌声を守り立てるなか、UKZは“Let Go”に参加。明快に攻めのモードを表現したアッパーな曲が目立つ作中にあって、壮麗なシンセと手数の多いビートで重厚に歩を進めるロウなミディアムに仕上げている。なお、相棒のMOMO "mocha" N.も別曲で活躍。
佐藤史果 “All for you” (2011)
小学生の頃からクワイアで歌ってきたという新人シンガーのデビュー・シングル。出自から連想されがちなパワフルさではなく、透明感と芯の強いフィーリングを兼ね備えた歌唱はさらりと爽やか。UKZはカップリングのスロウ“ポケット”を担当し、素材の味を活かしたクリーンな彩色に徹している。リリックを書いたのは今回の『Advent of UKZ』にも登場するHEAT_CZRだ。
AKANE 『D』 (2011)
RYO THE SKYWALKERの下から登場して脚光を浴びたダンスホール・レゲエ・シンガーの快作。UKZは先行配信シングルでもあった“I see”の作曲/プロデュースを担当。アレンジにいわゆるレゲエ色は皆無ながら、美麗なシンセの壁で築かれた神々しいスケール感と大らかな旋律によって、彼女の懐の深さを引き出すことに成功している。ポロウ風のフレーズも隠し味。
KinKi Kids “Time” (2011)
奇しくも『Advent of UKZ』と同日リリースとなったシングルで、人気ゲームソフト「真・三國無双6 」のイメージ・ソングとしてもすでにお馴染みの一曲。すでに『φ』(2007年)収録の“lOve in the φ”で作編曲を担当していたUKZだが、ここでは完全にエスタブリッシュされたダークなUKZ節を品の良い手捌きでストレートに披露している。詞を共作している点にも注目だろう。