クリープハイプ 『待ちくたびれて朝がくる』
[ interview ]
噂のクリープハイプが、かつてない強い追い風に乗って新作ミニ・アルバム『待ちくたびれて朝がくる』をリリースする。前作『踊り場から愛を込めて』が昨年9月の〈タワレコメン〉に選ばれて一気に注目を浴び、その後のツアーもソールドアウト続出で大盛況。今回は現メンバーになってから2作目ということで、バンド内の連携も音楽的な熟成度も格段にアップし、尾崎世界観(ヴォーカル/ギター)の強烈なハイトーンを生かした自由闊達な歌いっぷりも絶好調だ。切なくもエモーショナルなメロディー、人生の闇や陰を描くことも厭わない文学的な歌詞の深みなど、濃厚な個性を大胆に散りばめた自信作について、尾崎の胸の内を訊ねてみた。
人間性が出る音楽を
――聞いたところによると、日本の70年代のフォーク・ソングが好きらしいですね。
「そうです。父親がかぐや姫とかをずっと聴いてて、それがあたりまえの音楽だと思っていて。小さい頃は退屈な音楽だと思ってたんですけど、あらためて一回りしてから聴いてみた時に、自分のなかに自然に入っているものだなって気付きましたね。最近はもう聴かないですけど、一時期はすごく掘り下げて日本のフォークを聴いてました。でも似てるじゃないですか、どれも」
――音楽的なヴァリエーションという意味で? まぁ、そうですね。
「その人が好きだからそれを聴くという感じじゃないですか、フォークって。人間性とか見た目とか、生活してる感じとかがそのまま出る音楽だから。でもそこが凄いと思いましたね。曲とか歌詞とかはそこまで個性的じゃなくても、個人の人間性が出る音楽だから、聴いてる人もそこで選ぶんじゃないかな?って。そういうふうに見られたいなというのはいまもあります。どんな人がやっているかで判断してもらいたいという気持ちが」
――詞や曲はもちろん、ステージのパフォーマンスや私生活まで含めて?
「そうですね。〈この人普段何してんのかな?〉と思ってもらいたいというか。僕は思うんですよね、好きなものを観た時に、音楽も映画も舞台もそうですけど、〈この人はどうやって暮らしてるのかな?〉ってまず考えます」
――年齢的に言うと90年代ですか、リアルタイムの音楽体験としては。
「そうですね、90年代後半から2000年代前半ぐらいのものに影響受けてると思います。洋楽はほとんど聴かなくて、ゆずとか、BUMP OF CHICKENとか、GOING STEADYとか、そういうのが好きでした。やっぱり日本語でちゃんとメロディーがあって、言葉も自然に入ってくるものが好きでしたね。あとは高校生の時に、インディーズに目覚めた頃があったんですよ。Syrup16gとか、MONGOL800が売れてたりして、その時期に下北沢のギター・ロックを聴くようになって、いいなぁ思って。それでバンドを始めて」
――その頃から数えると、なんだかんだ、バンド歴は10年ぐらい?
「やってますね。長いです」
――けっこうメンバーも替わってるでしょう。
「替わってますね」
――2~3年前には、完全に一人でやっていた時期もあったみたいだし。
「ありましたね」
――でもやっぱりバンドがやりたかった?
「と、思ってましたね。〈バンド〉というものにずっと振り回されてきて、バンドがなければ悲しい思いや悔しい思いや腹立つ思いも絶対しないと思うんですけど、バンドがないと自分にとって嬉しいことも楽しいこともないなぁと思って、すごい矛盾してるんですよ」
――いまのメンバーになって、2年ぐらいでしたっけ。
「1年半ですね。でもサポートだった時から考えるともう2年ぐらいです」
――いまのメンバーには曲を作れる人もいるし、ヴォーカルも分け合える。これまでにない環境ですよね。
「ずっと一人で歌ってきたんで抵抗はあったんですけど、長谷川カオナシというベーシストがやってることに関しては、話し合いとかもなく、〈ここ歌ってみて〉っていう自然な流れでできたんで。他人が歌ってる気がしないというか、あたりまえのようにいまはできてますね」
――じゃあ音的にもメンタル的にも、クリープハイプの歴史上、いまがいちばんいい?
「とか言いますよね、インタヴューとかでみんな必ず(笑)。でも本当にそうなんです。いまはシンプルに〈バンドしてる〉っていう感じがしますね。それがずっとできなかったんですよ。元のものがないまま、ずっと違和感を持ってやってたんで。そこに10年かかるのはどうかと思うんですけど、これをやってたんだなと思いましたね、周りの人たちは(笑)」
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