INTERVIEW(2)――〈なりたい自分〉に向かうためのエネルギー
〈なりたい自分〉に向かうためのエネルギー
そんな彼女が、成長を表現するためにまず最初に意識したのは歌詞だという。
「〈伝わりやすさ〉を意識していたファースト・アルバムとは対照的に、今回は書きたいことをそのまま書きました。こうすることで1曲1曲が持つエネルギーは確実に増したと思います。サウンド面でも、いままでやったことのないようなトラックにトライしました」
サウンド面で採り入れた変化に呼応するように、また前作からの反省も踏まえて、自身のシンギングにも新たなエッセンスを加えたそうだ。これもまさに、経験に基づいた進化だと言えよう。
「もっと感情的で、起伏に富んだ歌声で表現できるように、自分の歌自体も改めてブラッシュアップしました。歌詞やメロディーだけじゃなく、歌い方でも伝えられるように。ピッチやタイミングが取れてるのは大前提で、プラスアルファ、声が持つ表情で気持ちを伝えること。そこに何よりこだわって作りましたね。例えば“Tears On Earth”というアコースティック・バラードでは、歌声で表現するということに重点を置いてレコーディングした結果、録りっぱなしの声にこだわって、あえて修正なしの〈素っぴんファイル〉をそのままミックスしてもらったんですよ(笑)」。
修正と言えば大袈裟だが、一切の処理をしていないヴォーカル・データをそのままミックス作業へ回すということはおそらくジャンル問わずかなり稀で、こんなところにも今回の作品を通して自分の素の思いを伝えたいという彼女の強い気持ちが感じられる。SAYは多くのフィーチャリング・ワークスを経験したおかげで、大人の〈Lady〉へと成長を遂げた。そして、彼女の歌に耳を傾けているファンに向けて、今度は彼女のほうからパワーを送る番がきたようだ。いまも変わらず自分を支えてくれるファンへ、SAYはこの最新作『Virgo』で思いの丈を届ける。
「このアルバムが、みんなそれぞれの〈なりたい自分〉に向かうためのエネルギーになれればいいなって思います。どんな時も自分の可能性を信じていてほしいんです。誰もがみんな一人一人選ばれてそこに存在してる、かけがえのないマスターピースなんですから」。
▼『Virgo』に参加したアーティストの作品
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