インタビュー

INTERVIEW(2)――〈怒り〉のアルバム



〈怒り〉のアルバム



ソンソン弁当箱_メインA



さらに、バンドは震災の前後でメンバー・チェンジも経験している。「中・高の6年間、吹奏楽部でいろんな打楽器をやってきていた」というコブヤリョウタ(ドラム)と、カジカいわく「みちのくのヤング・ギターヒーロー」だというヒラマケンタ(ギター)を迎え、一度はレコーディングも延期になりながら、新作『チャンネルがそのまま』を完成させた。

「最初は、レコーディングが延期になるか中止になるかもわからない状態だったので、不安で仕方ありませんでした。延期が決まった時も、バンドとして勢いが一旦止まってしまったことに対しての悔しさと不安でいっぱいでした。だけどまた、ソンソン弁当箱としてレコーディングをできたことはとても嬉しかった。もしかしたら、4人が二度と揃わなくなるかもしれなかったし、バンドも続けられるかもわからなかったから。だからこそ震災でできたこの空白の時間をぶっ飛ばすようなアルバムを作ってやろうって」。

『ロマンの日本』にあったスピード感やエッジはそのままに、凝ったミックスが施された“プラスチックバット”や7分を超える“キノウタベタキミ”ではサイケデリックな印象も強まった本作。その背景として特に色濃くあるのは、〈怒り〉の感情だという。

「震災の後、原発事故の後に自分や家族や自分の町のことを考えた時、本当にこの国は最善を尽くしてくれているのかと思う部分があって。だけどそう思っている自分も、実際その問題を解決しようともしない。〈さあ国民全員で一致団結だ!〉って言えたら、もしかしたら変えていくことができるかもしれないけど、越えられない壁や、たくさんの難しい事情もあって。その複雑な歯車をムリヤリ回すために、誰かが犠牲になっているような気がしてるんです。それでいてなんだか無気力な気もするんです、自分を含めて。この国に住んでる以上、もっともっと直視しないといけない問題はたくさんあるのに、みんなが目を背けてる気がするんです。それってすごく危ないことだと思ってて。そんな〈怒り〉を込めました。誰が悪いっていうんじゃないけど」。

こういったメッセージ性の高まりは、フェイヴァリットに挙げるINUの“メシ喰うな!”にオマージュを捧げた“メシ喰えない”や、『チャンネルがそのまま』というアルバムのタイトルにも表れている。

「INUが『メシ喰うな!』を出した30年ぐらい前の町田(町蔵)さんと僕らのいまの年齢が、とても近いんですね。“メシ喰うな!”はその時代を反映した曲だと勝手に思っているんですけど、“メシ喰えない”は“メシ喰うな!”から30年経った僕らの世代――超就職氷河期で、かつ昨今増えてきたゆとり世代のニート、ひきこもりの若者が〈メシ喰うな!〉とか言われたらどう返すかな?と思って作ったアンサー・ソングです。だから〈いやいやメシ喰う以前に金がないよ〉〈仕事もないよ〉〈部屋から出るのも怖いよ〉〈まず働きたくないよ〉って。その時代を歌うってことはバンドの役目の一つだと思っているので作りました。アルバム・タイトルに関しては、TVで〈チャンネルはそのまま〉と言われても、僕らはチャンネルを変えることができるじゃないですか。でも最近のこの国は、自分たちで変えられるはずなのに、変えることができない世の中になってきてしまっていると思うんです。それはまるで、ただひたすらに一つのTV番組を観せられ続けているようなものだなと。〈チャンネルはそのまま〉ではなくて、〈チャンネルがそのまま〉だなと思って」。

本当にチャンネルがそのままでいいのか? ソンソン弁当箱は、あなたに問いかけている。



カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2011年11月02日 18:01

更新: 2011年11月02日 18:01

インタヴュー・文/金子厚武