LONG REVIEW――ソンソン弁当箱 『チャンネルがそのまま』
去る8月、東北は宮城で行われた〈ARABAKI ROCK FEST. 2011〉の会場では、ソンソン弁当箱のTシャツをいたるところで見かけたが(残念ながら、彼らのライヴ自体は見逃してしまった)、そこで、仙台を拠点にライヴやイヴェントの主催を重ねる彼らの地元での支持の厚さを窺い知ったものだった。
そして、2010年の〈CDショップ大賞〉の選考では〈東北ブロック賞〉を獲得した前作『ロマンの日本』に続くセカンド・アルバム『チャンネルがそのまま』の登場。〈いまの俺ならお前をプラスチックバットで殺せる〉という粗野な言葉をポリティカルに発展させる“プラスチックバット”ではじまり、ファズ・ギターが暴走する“SODA”、祭囃子っぽいビートの“電気屋のおっさん”にサイケデリックでシュールな“キノウタベタキミ”など、全8曲を収録している。70~80sのジャパニーズ・パンクの影響を受けたガレージ路線で、黒猫チェルシーやDroogにも通じるサウンドだが、それ以上に“マンホール開けたら3LDK”のナンセンスさや昭和感溢れるジャケなどの、〈何が出てくるかわからない感じ〉がソンソン弁当箱らしさではないかと思う。
ちなみに、いま仙台のバンドが新譜を出すのだから、〈3.11〉を踏まえたメッセージ性のあるものに……という安直な思惑で最初は聴いていたが、そう取れそうな部分もあったりなかったり。これは聴き手それぞれの判断に委ねたい。
本作に充満しているのは、フラストレーションを音楽で燃やし尽くそうとする、不屈のエネルギーだ。それは各曲のテーマやサウンドに言葉のフォーカスがピタリと合った、歌詞のモードの変更にも表れており、たとえばINU“メシ喰うな!”のオマージュで、そこに社会性を持たせた“メシ喰えない”に顕著だろう。そのスピリットで、東北から全国を騒がせてくれ!
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