インタビュー

the HIATUS 『A World Of Pandemonium』

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the HIATUSの3rdアルバムが完成した。その名も、『A World Of Pandemonium』――直訳すると、
<混乱の世界>。まさに、飾りも偽りもない現実と、そんな現実が求めているものが映し出されているのだ。
きらきらと光る、生楽器と歌という音楽の骨格の力と、型に嵌らない解放的なアレンジ。
気付かせ、包み込む、人間味溢れる傑作の誕生である。

「音楽を作ったり演奏したりすることが目的であって、他のなにかを達成するための
手段じゃない」(細美武士)

the HIATUSが3rdアルバム『A World Of Pandemonium』を完成させた。
細美武士(Vo&G)、ウエノコウジ(B)、堀江博久(Key)、柏倉隆史(Dr)、masasucks(G)という、共にステージにも立ち続けてきた、様々なキャリアを重ねてきたアーティストたちが、曲作りの段階から集結。
作られた44曲の中から、今作に収録されている10曲を厳選したという。


細美武士(Vo&G)(以下同)「今回の作品は、これでもかってくらい、
みんなで作れた感じです。曲も、自分が書いて持っていったりとか、
それぞれのアイディアを持ち寄ったりするっていうよりは、
みんなで集まってから作っていくことが多かったです。
自分の役割は、メロディーと歌詞と歌、って意識でやってました。
曲単位で作ってったから、どうやってアルバムに筋を通すかを考えたのは
最後に作った2曲くらいですかね。
生楽器が増えた理由は、まあ個人的に最近は楽器がカラフルに入った、
賑やかな感じが好きだし、わりと一人で弾き語りする機会も増えて来た
おかげで、アコギに触ること自体が面白くなっていたところもあるかもしれないけど、結局は曲に合った音を探していった結果だと思います。」


生楽器が増えたことによって、プレイヤーのスキルだけではなく、人間味もクリアに
聴こえてくる。そして、細美の歌にも、思想や感情が裸になって表れている。
そこには、音そのものを生かすレコーディングのスタイルも、大きく関わっているようだ。


「だいぶレコーディングらしいレコーディングをしましたね。テクノロジー離れっていうか、
あんまりコンピュータでショートカットしてないし。ちょっと不器用な歌でも、直したりすると、
綺麗にはなるけど体温はなくなっちゃうんですよね。そういうものに対して面白くないなあ、って
感じるようになりました。以前はもうちょっと上手く歌えるまで歌い直したいって思ってたとこも、
伝わる歌が録れればいいやって思えるようになったし。みんなのジャッジをすごく信頼できてるってことも
あるのかな。当たり前にいい音にしたいって取り組めたし、いい音の気持ちよさも、聞いてくれる人と
共有できると嬉しいです」



 
さらに、レコーディングだけではなく、ミックスからマスタリングまで、その思いを反映させている。
ミックスエンジニアに名を連ねているのは、トータスのJohn McEntire、 DCハードコアの雄 J.Robins、
さらにTchad BlakeやBirgir Jon Birgissonといった、数々の名作に携わってきた面々。
そしてマスタリングは、これまでに引き続きTed Jensenが務めた。

 音や歌の生々しさ、邪念のない意思……全てにおいて、ピュアに仕上げられた今作。
そしてそれは、今の世の中が求めているものとシンクロしているような気がする。
3月11日以降、虚飾が剥がれ、シンプルな考え方に誰もが立ち戻った今、
このアルバムから感じられるピュアネスに、共感や安心を抱く人も多いはずだ。
さらに、The RentalsのJamie Blakeと共作、共演している“Souls”などからは、
絶妙なハーモニーに、人と人との繋がりの温かさまで感じることができる。




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「その時代に生きてるミュージシャンがものを作るんだから、当然その時代を映したものが作品として
出てくると思いますよ。歌詞にしてもそうで、あの、好きな詩人の言葉に、
『詩とは現代の鬼っ子であろう』っていうのがあるんですけど、やっぱり自分なりの、世界や人間に対する
解釈がなければ書けないんじゃないですかね。
他の人と一緒である必要も、模範的である必要もないけれど、自分から世界はこう見えてますっていうのが
掴めてないと。そういう意味では、個人としての主義主張や時代からの影響みたいなものは
勝手に入り込むっていう感覚で、あえて声高に、みんなこうしようぜ、って呼び掛けたいっていうのはない。
だって俺には音楽を作ったり、演奏したりすることが目的であって、他のなにかを達成するための
手段じゃないから。広がりや作用はあるんだろうけど、そこを求めることは自分にとっては雑念の一種だし、
考えてもしょうがない。ただその結果として、出した作品がポジティブな波紋を周囲に伝搬したりすることが
あるのなら、そんなに夢のある話はないなあと思います」


 現在、来年3月まで続く全国ツアーを敢行中。今作に収録されている体温のある楽曲たちが、
オーディエンスの体温と溶け合った時に、とても美しい空気が生まれそうで、楽しみで仕方がない。


「面白いと思いますよ。演奏するのは凄く難しいけど、そのぶん面白い。
新しいおもちゃを手に入れた子供みたいな気分です」



■New Album……『A World Of Pandemonium』 Now on sale!

■ SONG LIST…

01.Deerhounds
02.Superblock
03.The Tower and The Snake
04.Souls feat.Jamie Blake 
05.Bittersweet / Hatching Mayflies
06.Broccoli
07.Flyleaf
08.Shimmer
09.Snowflakes
10.On Your Way Home



 

■ A World Of Pandemonium Tour 2011-2012……

12/7日(水)Zepp Sendai
12/8日(木)山形ミュージック昭和Session
12/10日(土) 盛岡club change WAVE
12/11日(日) 青森QUARTER
12/14日(水) 京都KYOTO MUSE
12/15日(木)神戸WYNTERLAND
12/20日(火) 横浜BLITZ
12/26日(月) 岐阜club-G
12/27日(火)松阪M'AXA

2012年
1/15日(日) 広島CLUB QUATTRO
1/16日(月) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
1/18日(水) 周南TIKI-TA
1/21日(土) いわきclub SONIC
1/22日(日) 水戸ライトハウス
1/24日(火)、25日(水) Zepp Tokyo
1/28日(土)、29日(日)大阪府 Zepp Osaka

※2月以降のTOUR情報はオフィシャルサイトをチェック!

 

■EVENT……

「FM802 ROCK FESTIVAL『RADIO CRAZY』」
12月30日(金) インテックス大阪

「COUNTDOWN JAPAN 11/12」
12月31日(土)幕張メッセ国際展示場1~8ホール、イベントホール

 

■ PROFILE…the HIATUS(ザ・ハイエイタス)

09年結成。細美武士、ウエノコウジ、堀江博久、柏倉隆史、masasucks、一瀬正和、伊澤一葉からなる音楽集団。
オルタナティブ、アートロック、エレクトロニカへ傾倒しつつも、ジャンル不問の新しい音楽を追究し続ける。

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記事内容:TOWER 2011/12/5号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2011年12月05日 12:00

ソース: 2011/12/5

TEXT:高橋美穂