LONG REVIEW――マキ凛花 『GIRL』
夢見る気持ちを拡大するエンターテイメント
ここのところのマキ凛花について私が知っている2、3の事柄を挙げてみると、映画「ダーリンは外国人」に挿入歌“mon-ami”を提供したり、大阪は京橋・京阪モールのTVCMに出演して歌を披露するなど活動の幅が広がっているように思えるが、そろそろ新作の連絡が入ってもいいのではないかと思っていた御仁も多かったはず。お待ちどうさま。
さて、このたび3年ぶりに届けられたアルバムのタイトルは『GIRL』。きっと〈レトロ×ガーリー〉モードな楽曲がたっぷりなんだろうと容易に予想が立つだろう。実際に〈ポップでキュート、ちょいセクシー〉をモットーとするこのシンガーらしさが存分に炸裂した内容となっており、夢見る気分もうんと増量されている。
ラグタイム風の“恋の魔法をかけて”、パヤパヤでシュビドゥワーなマーチング・ナンバー“夢見るキラキラ☆ドール”ほか、どの場面でもバックには〈だって女の子だもん!〉って文字がデカデカと浮かび上がっている。彼女と同じくナニワを拠点とするインスト・ジャズ・バンド、カルメラを従えた“カモン・ナ・マイ・ハウス”、〈さよならを教えて〉の邦題で知られるフランソワーズ・アルディの“Comment Te Dire Adieu”といった女の子が女の子らしく振る舞えるカヴァー曲もまた、われわれの夢と欲望を拡大してくれるエンターテインメントとして、しっかり機能している。
のびのびとポップスを追求することで格別な開放感がもたらされていることが本作の美点だが、なによりも彼女がポップスの神様から愛されているって事実を知らせてくれるところがステキじゃないか。なかでっも、FUNKYMIC(元・韻シスト)のラップをフィーチャーしたウォール・オブ・サウンド・スタイルのバラード“Believe Yourself”は、みんなに親しまれるであろう名曲である。
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