INTERVIEW(3)――それならラストチャンスで
それならラストチャンスで
――嫌でも現実が目の前に立ちはだかる時期ですよね。
Kaede「そうですね、就職だったり……。やっぱり、ちゃんと進学したいっていう気持ちと、これで食べていける保証っていうのもないですし」
――一時的には食べられたとしても、そのまま食べていけるのかもわからないし。
Kaede「それなら、ちゃんと大学を出て就職のことを考えたほうがいいのかなとか思ったし、県外の大学を受けようと思ってたので、それなら続けられないような気がしたので、〈辞めます〉っていう話をしてて。でも、〈ちょっと待って、こういう話があるんだけど〉って言われて」
――それが『勝ち抜き!アイドル天国!!ヌキ天』という番組があって、それに勝ち抜けばメジャー・デビューできるんだよ、と。
Kaede「〈じゃあ、それは受けたほうがいいんじゃないですか?〉っていう話になって」
――完全に他人事みたいですよ(笑)。
Kaede「フフフフ、そうですね(笑)。2人で受けるっていう手もあったのかもしれないですけど、それならラストチャンスでやってみてもいいかなと思って」
――〈受かったら受かったで私も腹を決めます〉みたいな。
Kaede「……そうですね。だから大きかったです、『ヌキ天』は。『ヌキ天』がなかったら、そのまま辞めてました」
――そのせいか、メンバーの切羽詰まった感じがすごい伝わってきたんですよね。後がない感じっていうか。
Kaede「全然なかったですね(笑)」
――だからこそ落ちたときには本気で食い下がるし、再挑戦できることになれば本気で泣くしで。
Kaede「あのときはNao☆ちゃんが反論すると思ってなくて(笑)。〈いや、でも!〉とか言って」
――不合格を出した審査員の人に「この先どうやってプロデュースしていいのかわからない」って言われた途端、「私たちは自分たちで全部やってきたんです!」って反論して。そしたら、それが聞き入れられて。あれはホント感動的な空間でしたよ。
Kaede「でも、まさか6回までいくとは思わなくて。きっと5回目で落とされるだろうと思ってて……」
――普通は4回勝ち抜けばいいのに特例で再挑戦することになったから、普通に考えれば5回目で合格になるはずなんでしょうけど、そこでまた保留が出ましたからね。
Kaede「〈えっ?〉と思って」
――パンチが足りないから、もう一回挑戦してほしいっていう。
Kaede「〈ここは新曲でしょ?〉みたいな。あれはビックリしました」
――ところが新曲ができないとかで、5回目の再挑戦まで長引いて。
Kaede「合格してからもCDを出すまで1年かかって……。あのときは結構複雑でしたね」
――勝ち抜いた瞬間はすごい感動的で、華々しい未来が開けそうな気がしましたけど、そこからまた大変だったわけですね。
Kaede「そうですよね。勝ち抜いたのに何も話が来ない。クマさん(マネージャー)に何回も訊いても、〈いや、まだ話は来てない〉って言われて」
――あの頃はGyaOが大変なことになってたから、みんな不安だったんですよ。Negiccoの前に勝ち抜いていた2代目ヌキ天クイーンも不安だったみたいで、「私たちのことを放置したまま、みんなNegiccoのほうに行っちゃうんだ……」とか言ってて。要は勝ち抜いたからCDが出せるはずだったのが、予算がなくてROLLYさんが2曲作ってくれたのにレコーディングも1曲しかできなくて、それも結局は音源の無料配信のみで終わったりで。
Kaede「たれめのロリーズさんですか?」
――そうです。2代目ヌキ天クイーンでもそういう状態だったから、3代目ヌキ天クイーンのNegiccoもやっぱり予算が足りないような状況になってたわけですよね。
Kaede「なんか……いろいろありましたもんね(笑)」
――つくづく大人の事情に巻き込まれやすいグループですよね。
Kaede「そうなんですよね。こういう世界なんでしょうがないかなと思うんですけど」
――結果は出すけれども、なぜか必ず副賞にも恵まれないし(笑)。
Kaede「ホントにそうですね。〈U.M.U AWARD〉のときも(笑)」
――その話は後で聞くとして(笑)。ヌキ天を勝ち抜いたあとで1年ぐらい放置の期間があったわけですけど、そのときって脱退を本気で考えたのに芸能界で生きるって決めた直後だったわけじゃないですか。そこから放置されるのって、ものすごい不安ですよね。
Kaede「ホントですよね……。これでよかったのかなって思いました、やっぱり。大学も入っちゃったし、いまさら別の大学に行くのもなって。この学部でいいのかなとか思ったりして、どうなるんだろうってずっと不安でした。曲もあちらで作っていただいてるっていう話だったので、これまでいっしょに曲を作ってきたconnieさんはどうなるんだろうって。ずっとリリースがないままだとアレだから、こっちでCDも作っていいのかなとか、いろいろ考えて。結局、たしか被りましたよね、手焼きのCD-Rと出た時期が。いろいろ難しかったですね、時期的に……」
――『プラスちっく☆スター』はボクも最初に聴いたときは、正直〈あれ?〉って感じだったんですけど、それをライヴでやっていくうちに馴染ませていくのがNegiccoの力だよなあって、さっきもMeguさんと話してたんですよ。
Kaede「あのときは〈やってみよう!〉ってNao☆ちゃんが言ってくれたので。最初に3人でいっしょに曲を聴いたとき、〈これじゃダメだ……〉って話になったんですけど。クマさんも〈文句の電話を入れとく〉って言ってたぐらいで(笑)。でも、結果的にすごく評判もよかったし、ダンスも素敵なのをつけていただいたので」
――ボクもあの曲の最初の打ち合わせに呼ばれただけで、楽曲制作には一切タッチしてなくて、出来上がってから音源がメールで送られてきたんですよ。「どうですか? 感想を聞かせてください」みたいなこと聞かれたから、「……ドン、ドンっていうビートを強めたほうがいいです」ぐらいしか言えなくて。
Kaede「そうですよね、出来上がってからだと」
――そんな感じでNegiccoは、チャンスをつかんだはずなのに、そのチャンスが勝手に消滅するようなパターンを何度も繰り返すわけですよね。
Kaede「そのせいで3人とも疑い深くなって(笑)」
――ダハハハハ! 大人を信用しきれない(笑)。
Kaede「そうです。また騙されるんじゃないかって」
――またどっかでこのチャンスもなくなるんだろうなっていう。
Kaede「いつでも不安ですよね」
――それによって強くなってる部分もあるわけですか?
Kaede「それもあるのかもしれないですね。さんざんいろいろ経験してきてるからっていうのはあると思います」
――いま活動9年目で、そんなことばかり経験してきてるのに、それでも世間ズレしてないのがすごいと思うんですよ。変にスレた大人になってないというか、〈……どうせ今回もダメなんでしょ?〉みたいな枯れ方はしてないわけじゃないですか。
Kaede「ないですね。何度でも乗り越えなきゃっていう、そこは」
――U.M.U AWARDという地方アイドル決定戦の話が出たときはどう思ったんですか?
Kaede「オファーをいただいて、来てくださいっていうことだったんですけど」
――地方アイドルのトップ決めるんだったら、Negiccoは参加しなきゃダメですからね。
Kaede「……そうだったんですかね?」
――キャリア的にも絶対そうですよ!
Kaede「ほかの出演者さんを見たときに、正直あんまり聞いたことないなって方も何組かいらっしゃったので、それが逆に実力もわからないし怖いなっていうのがあったんですけど」
――この話を聞いたとき、ボクは「ホリプロ主催だし、東京代表でホリプロのグループがいるから、これは罠の匂いがする!」って言ってたわけですけど……。
Kaede「そうですよね。私たちも、それはあるのかなって話してました(笑)」
――ところが罠も何もなくて、審査はすごいちゃんとしてたっていう。
Kaede「ホントよかったです!」
――しかし、ふたたび副賞に恵まれない事態になり(笑)。
Kaede「なんなんですかね(笑)。だけど一応は名誉というか、優勝っていう肩書はついたので」
――そして、それがいろんな売りにはなったからプラスにはなってるわけで。
Kaede「プラスになりました。地方アイドルの大会に優勝したNegiccoっていうことで」