LUNKHEAD 『青に染まる白』
[ interview ]
LUNKHEADのことを思うといつも〈ジタバタ〉という言葉が頭に浮かぶ。不器用で、直情的で、生きる意味を探し、希望を見失わず、なおかつ迷いも悩みもたっぷり抱えて、曲がりくねった道をジタバタしながら驀進し続ける。生き様そのものを音楽に叩きつけるエモーショナルなロック・バンドとして、その存在がいまの時代に極めて貴重であることは言うまでもない。そして最新作『青に染まる白』では、さまざまな変転を経てふたたび〈LUNKHEADらしさ〉の核心へと回帰した、力強い音が鳴っている。これをバンド史上屈指の傑作と呼ぶことに、なんの躊躇も要らないだろう。小高芳太朗(ヴォーカル/ギター)の言葉も迷いなく、力強く響いてくる。
歩いてきた道のりを全肯定してくれる曲
――今年は年明け早々から東名阪でワンマン・ライヴをやりましたよね。やっぱりバンドの調子って、ライヴをやるとわかるものですか。
「うん、やっぱりね、自分のことって自分ではあんまりわからなかったりするから。お客さんは鏡だから、お客さんを見てて〈あ、オレらいい感じだな〉って初めてわかる。そういう意味ではすごくいいライヴでしたね。お客さんがすごくて、最初から最後までみんな〈うぉー!〉って拳を挙げてたから。実際メンバーが替わって、(ドラムスの石川)龍が抜けたタイミングで一歩引いた人が多くて、動員も減ったんですよ。でも今回のライヴのアンケートを読んだら、〈1回離れてたけど、新曲を聴いてやっぱり好きだと思って来ました〉と言う人がすごい多くて。これはいい兆しだなと思いましたね」
――そして新作が『青に染まる白』。前作『[vivo]』からはちょうど1年ぶりになりますか。
「前作は、〈メンバーが替わった〉という意識がバンドのなかですごくあって、〈前のほうが良かったね〉と言われないものを作ろうという使命感を持って突き進んでいってたから。とにかく〈強いもの〉を作らなきゃと思ってて、実際そういうものが作れたと思うんですよ。好き嫌いは別にして。歌詞も、メンバーが替わったこととは別に、あの頃のオレには歌いたいことがあったんですよね。それは〈命〉のことだったりするんですけど、〈これはいましか歌えない〉と思って、それで『[vivo]』が出来た時、〈オレは次に何を歌うんだろうな?〉って……その時から思ってたんですよね。そこで1回スッカラカンになって、改めていまのバンドのこととか、いままでの自分の人生を考えながら歌詞を書いていったのが、今回の曲なんですけど。そしたら、ずっと応援してくれてる人から言われたんですよ。〈自分が初めて好きになった時のLUNKHEADの感じがする〉って」
――それは、いつ頃のことを言ってるんでしょうね。
「たぶん『地図』とか、メジャーの最初の頃の、青臭い感じだと思うんですけどね。〈30過ぎて青臭いことをまだ歌ってるのか?〉という葛藤がずっとあったけど、今回は〈もういいや。歌い続けよう〉と思ったから。たぶんそれがその人に、そういう感じで伝わったんだと思うんですよね」
――ああ、なるほど。
「あの頃に戻ったわけじゃないんだけど、前に進んで、なおかつ何も変わっていないという感じがオレもするし、ひと周りして戻ってきたというか、何かを取り戻した感じがあるから。その象徴になる曲が“果てしなく白に近づきたい青”で、東名阪のワンマンでもあの曲がいちばん中心にあったし、ライヴに合わせてシングル・リリースもしたし。この1曲があるだけでほかの曲全部を、オレらが歩いてきた道のりを全部肯定してくれるような1曲になったから、それが良かったんでしょうね。もうオレらは何でもできるし、どんな曲をやってもいいなと思ったから、『青に染まる白』というアルバムは振り幅が広いんですよ」
――確かに。
「途中までは不安でしたけどね。『[vivo]』がすごくコンセプチュアルなアルバムだったんで、今回はまとまんねぇぞっていう不安があったんですけど、出来上がってみると〈もう何をやってもいいわ、オレらは〉と。〈何をやってもLUNKHEADの音にできるぞ〉と。いままでいろんなことに手を出してきて、すごいポップなものに寄ってみたり、ドロドロなものに寄ってみたり、あったじゃないですか」
――うん(笑)。いちいち極端でした。
「それはオレのせいなんですけど、常に反動があったんですよ。それには悪かったところもあるけど、良かったところもあって、良かった部分だけを今回活かせたなと思うんですよ。いろんなことをやってきたおかげで、何をやってもLUNKHEADにできるスキルが手に入ったという、そういうアルバムだと思います。ただ、歌詞の世界観的には狭いんですよ。すごくちっちゃい世界で、そこらへんも昔っぽいなという気がする。『[[vivo]』の世界観はすごく広くて、悟りの境地みたいな感じだったんで。今回も生き死にのことはいっぱい出てくるけど、あくまでも狭い世界で、友達とオレとか、そのぐらいの感じだから。人類へ向けてとか、そういう大きなテーマじゃない」