インタビュー

INTERVIEW(2)――ひと回りして知る青臭さ



ひと回りして知る青臭さ



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――曲が出来た順番で言うと、何が最初になるんですか。

「『REACT』(2011年10月にライヴ会場限定でリリースされたセルフ・カヴァー集)を録ってるのと同じ頃に“十六夜の月の道”を録っていて、それが最初かな。曲は2011年の春ぐらいから作ってたんですけど、だいたいオレは最後のほうに出来る曲がキレキレなんで、今回のアルバムに入ってるのは、ほとんどが10月とか11月に出来た曲ですね。最後はギリギリのスケジュールで、“みゆき”と“泡沫”はツアー先で歌詞を書いてたし、1曲目の“濃藍”も最後のほうに出来た曲で、“果てしなく白に近づきたい青”もそう。最初は“明日”がシングル候補だったんですけど、オレは“濃藍”でいきたいと言ってて、もうこの日までに決めないと、っていう最後の会議の日に“果てしなく白に近づきたい青”の歌詞が書けて、スタッフにメールしたら〈これじゃん!〉ということになって、シングルはギリギリで決まりました」

――“果てしなく青に近づきたい白”については、エピソードがあるんですよね。小高くんのブログを読んでる人は知ってると思うけど、改めて話してもらえますか。

「日大の学祭でTHE BACK HORNと[Champagne]といっしょにライヴをやった時、とにかくTHE BACK HORNがカッコ良かったんですよ。しかもベストの選曲で、昔の曲から最新の曲まで、こういうセットリストでライヴができることがすごいなと思って。〈貫いてるな〉と。オレらは、貫けなかったから。あっち行ったりこっち行ったりしてたから。〈もっとポップなの作ったほうがいいんじゃない?〉って言われたら、〈うーん、そうか〉と思って“きらりいろ”とか作ってたから(笑)」

――(笑)あれはあれで良かったと思うけど。

「〈ギター歪まないほうがいいんじゃないの?〉とか言われると、〈そうかな〉と思ってそういうアレンジにしてみたり。みんな売れようとして必死だったんですよ。でもやっぱりどこか、投げやりに作ってたんですよね。他人事みたいに。それが何か悔しいなと思って、偽らざる自分を書こうと思ったんですよ。〈自分らしさって何だろう?〉ということを考えながら」

―これは本当に偽らざる自分の歌ですよ。一言一句。〈僕たちは皆、本当は最初から全部を持っている/それは見失い忘れてしまう/それでも無くしたりはしないんだ〉とか、本当に素晴しいと思います。

「そこはね、最初は〈クソッ!〉と思って、捨ててたんですよ。でもそれ以外に言いようがないと思って、またゴミ箱からごそごそって引っ張り出してきた」

――なんで〈クソッ!〉なの?

「いや、字面がクサイなと思って(笑)。でもやっぱり自分に言い聞かせたい言葉だったんでしょうね。これを30代が歌うから逆に生々しいという(笑)。20代前半のオレには歌わせられねぇな、みたいな。ひと回りして知る青臭さみたいな」

――ああ、そう、それだと思います。このアルバムの核心は。ひと回りして知る青臭さ。

「だからウソっぽく聴こえないんだと思うんですよ。たとえば“白い声”をいまのオレが作ったらウソっぽいなと思うし、あれはあの時しか歌えない自意識過剰感というか、被害妄想というか、あれはあの時のオレが歌うから説得力があったのであって、ああいうのはいまのオレには作れない。でもいまはいまなりの気持ちを吐き出した結果として、ひと回りした青臭さになったなぁと思います。結局オレら、そういう音楽しか作れないんですよね。良くも悪くも。だって、秋元康さんみたいな歌詞は書けないもん」

――それはそうでしょう。というか、そこ目標だったんですか(笑)。

「目標にはしてないけど、やっぱりすごいなぁと思うんですよ。10代の少女の世界も書けちゃうし、円熟した女性の恋心とかも書いちゃうわけじゃないですか。ああいう人が本当の天才なんだろうなとは思う。フィクションだけで人を感動させちゃうという。ゼロからストーリーを作れちゃう、そういう才能はオレにはないから。だからそこは、しょうがないです」


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掲載: 2012年02月08日 18:03

更新: 2012年02月08日 18:03

インタヴュー・文/宮本英夫