インタビュー

LUNKHEAD 『メメントモリ』



LUNKHEAD



[ interview ]

ニュー・アルバム『メメントモリ』のテーマは〈生きること〉。それはLUNKHEADがずっと歌い続けてきたことで、新しい方向性でも何でもない。が、死を意識することで生の喜びを照射するという、新たな視点を得た彼らの歌は確実に新しい。非常に重いテーマにも関わらず、サウンドは力強く明るい輝きに満ち、小高芳太朗(ヴォーカル/ギター)の歌からは前向きな生命力が溢れ出す。いくつもの〈死〉を間近に見ることで、いかにしてLUNKHEADは〈生〉の意味を再発見できたのか。小高の話を聞こう。



〈死ぬ〉ことを前提に〈生きる〉ことを歌う



――すっごい良かった。本当に良いアルバム。やってることは別に変わってないと思うんだけど、今回は聴いたあとの後味が、未来を向いてるというか、前向きな感じがすごくしていて。

「それ、みんなにすごい言ってもらえるんですよ」

――ああ。やっぱり。

「みんな同じこと言ってくれるんですよ。『メメントモリ』という言葉は〈いつか死ぬことを忘れない〉っていう意味で、調べたら、宗教によって言葉の解釈が変わっていくみたいなんだけど、もともとは〈いつか死ぬんだからいまはちゃんと楽しんで生きよう〉みたいな意味なんですよね。オレはそっちの意味で使ったので、ネガティヴな意味じゃない。で、いままでは……って、いきなり核心の話になってるけど」

――いいですよ。行きましょう。

「いままでは、同じ〈生きる〉ということを歌い続けてきて、テーマは変わってないと思うんですけど、何て言うか……いままではなんとなく未来も生きている、生きていこうよという意味で〈生きる〉ということを歌ってた気がするんですね。回りくどい言い方ですけど。つまり〈死ぬ〉ことを前提に〈生きる〉ことを歌ってきたわけではなかったのかもな、と」



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――ああ。なるほど。

「今回は〈死〉というものをすごい感じながら歌詞を書いたなと思っていて、それが〈死ぬ〉ことを前提に〈生きる〉ことを歌う、ということなんですけど。いちばんのきっかけはボビー(所属事務所・直球の元代表。昨年逝去)が死んだことなんですよ。いや、ボビーが死んだことは、そんなに悲しくはないんです。死んだ気があんまりしてないから。死んだくせにまだい続けてるというか、いまだに生きてるような感じでみんな話すんですよね。ボビーのことを」

――うん。

「ボビーは餅が食えないんで、食事に餅が出てくると〈あー、ボビー食えねぇよ〉って、普通にみんな話すんですよ。あいつ、死んだのになんでこんなに存在感あるんだ?って。濃いなー、濃く生きたなーって。ボビーの場合は誰も、本人も死ぬ準備がなく、パチン!と突然いなくなっちゃったから、余計にそういう感じがしないのかもしれないけど。即死だし、苦しんでもいないし、外傷もないし。だから、いい人生っちゃあいい人生っすよね。そこからあと、友達が自殺したりとか、そういうことが続いて、誰かが死んだ時に、死んだ誰かよりも残された人たちのことをすごい考えちゃって。死んじゃった人は死んじゃったし、悪い言い方だけど、それっきりじゃないですか。でも生き残った人は、それでも生きていかなきゃいけないから、そっちの人たちのことをすごい考えちゃって」

――うん。

「それがテーマになってるんですよ。〈その人たちに対して何ができるんだろうな?〉と。たとえば自分の子供が死んだら、どうやって生きていけばいいんだろう?って、すごい思うんですよ。想像すらできないんですよね。だから実際そうなっちゃった人たちには何もしてあげられない、何もわかってあげられないんですけど、だからってあとを追って死ぬわけにもいかないし、生きていかなきゃいけないし、仕事もしなきゃいけない。生きるって、ドラマみたいに綺麗にならなくて、ずっと悲しんでいられたらいいけどそうもいかないし、生きるってすごく生々しいことだなと思って。そういう時に、きっと一人でいるのがいちばん良くないと思って、何もできなくてもいっしょにいて、メシ食ったりとか、遊んだりとか、その時だけでも忘れられるように。いや、忘れなくても別に良くて、死んだやつの話をみんなでしたりとか、バカみたいな話をあえてするとか、そうするとみんなのなかに、死んだそいつのことがずっといてくれてすごく嬉しいと思うし。何もできないけど、ただそばにいてあげるような、そういう曲を作りたいなと」

――ああ。そういうことなのか。

「いままでは、自分の正義で相手をねじ伏せたいみたいなところが、すごいあった気がするんですよ。特に『[vivo]』の時とか、言葉を鋭くして、曲も鋭くして。その時はすげぇ言いたいことがあって、誰かに対してというよりは世界に対してぶつけてたと思うんですけど。今回は、聴いてくれた人のそばに黙って存在してるような感じにしたいなというのがあって、元気が出るようなアルバムにしたいと思った。だからきっと前を向いてるのかなって、自分でも思うんですよね」


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掲載: 2013年09月18日 18:01

更新: 2013年09月18日 18:01

インタヴュー・文/宮本英夫