インタビュー

INTERVIEW(2)――シンプルでストレートに



シンプルでストレートに



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――うん。そうだと思う。激しい曲もたくさんあるけど、刺々しくはない。むしろポップで、爽快な感じさえするし。

「今回はベスト(今年1月にリリースされた『ENTRANCE 2 BEST OF LUNKHEAD 2008〜2012』)のあとだし、代表作にしないといけないなっていうのは、ボビーが生きてる頃からずっと話していて。ボビーは、〈次のアルバムが売れるラスト・チャンスだ〉って、来年デビュー10周年という節目だから〈この節目を使うしかないぞ〉って言ってたんですよ。だから絶対いいアルバムにしなきゃいけないって。で、凝ったコード進行とか凝った構成というものをやりたくなるじゃないですか、長くやってると。そのほうがカッコ良いんじゃないか?みたいな。でもやっぱシンプルなほうが、みんな好きなんですよね。ベストを聴いて思ったのは、人気がある曲はシンプルでストレートで、そっちのほうがキャッチーでみんな好きなんだなと思って、今回はそこをすごい意識して、メロディーとかコード進行はシンプルでストレートに、ということを心掛けました。ちょっと不安になったんですけどね、軽いアルバムになるんじゃないか?って。でもそこはメンバーのアレンジに委ねました。それがこのアルバムの明るい感じに繋がって、良かったんじゃないかなと思います」

――特にリズム隊、最高ですよ。本当にすごいグルーヴを叩き出してる。

「働かせましたね、馬車馬のように(笑)」

――モンスターですよ、あの二人は(笑)。超絶テクニックで、変態で、エモーショナルで。

「でもけっこう悩んでましたよ、桜井(雄一、ドラムス)さんは。ほかの現場もかぶってて、やることが膨大で、いつもテンパってましたね。で、オレがだいたい〈イケイケ〉か〈オラオラ〉しか言ってなかったらしくて、〈このドラムどうしよう?〉って言われて〈やっぱオラオラって感じじゃないですか〉って答えたら、〈あなた、イケイケかオラオラしか言わないじゃない!〉って(笑)。そしたら(ギターの山下)壮が、〈オレも、ポップでキャッチーでクレイジーな、しか言われない〉って(笑)。で、(ベースの合田)悟には〈そこはもっと超絶で〉とか。そんな感じでしたね」



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――それで伝わるんだから。メンバーが偉いですよ(笑)。

「壮のギターにも超ダメ出しした。〈そういう爽やかな感じ、要らない〉とか。それは“いきているから”のリフなんですけど、〈この曲のギターはさ、もっとバカっぽいものが求められてるんだよ〉って言ってたら、あのリフが出てきて、〈やったじゃん。すげぇキャッチーでバカっぽいじゃん〉って。あとね、歌詞を見せる曲と見せない曲があって、たとえば“月の城”とか“幻灯”とかは、歌詞を見せてその世界観をみんなで描くみたいな感じなんですけど、逆に“はるなつあきふゆはる”とかは、あんなリズムなのに歌詞がすごいメロウじゃないですか」

――ですね。

「ハネた感じのこういうリズムは初挑戦で、1曲もやったことがない。だから作ってみたいなと思ったんですけど、でも歌詞がこういうものだから、あまりにウキウキしててもなーと思ってたら、アレンジしてるとどんどんウキウキし出すんですよ、みんな。こういうリズムだから。ギターも〈チュッチュッチュー♪〉って感じになって、〈これはボツるかな〉と(笑)。だから壮にだけ歌詞を見せたんですよ。歌詞に引っ張られてリズム隊もドヨンとしちゃったら、このリズムでやる意味がない。リズム隊は陽気に明るく、それこそがさっき言った〈いっしょにいる時ぐらいは楽しい気持ちにさせたい〉という――この曲はまさに死んだ友達のことを思って作ったので、そういう曲でこういうことを歌えたのがすごい良かったと思うんですよ。で、壮に電話して〈リズム隊はバカっぽくていいんだけど、ギターで憂いを出したいから、歌詞を送るから見てよ〉って。次の朝、メールで歌詞を読んだ壮は、ズーンと落ちたらしい。2月に死んだ飼い猫のことを思い出して。猫が子供みたいな感じだったから。ずっと病気で、介護しながら飼ってたのが、急に具合が悪くなって、2月に死んじゃった。それを思い出して、ズーンと暗くなって、〈オレはなんてバカなギターを弾いてたんだろう〉って思ったらしい」

――ああ。でもそれはしょうがない。

「そんなにズーンと落ちるとは思わなかったんだけど、〈これは効果あったな〉ってちょっと思った(笑)。作詞者冥利に尽きますね。それでギターがすごく良い感じになった」

――そのエピソードはすごくおもしろいなぁ。伝えたい世界観、感情を、最適の音とアレンジで伝えるという、このアルバムの核心がよくわかって。あと、確か“共犯”だけ、ちょっと前の曲でしたっけ。

「1年前に作った曲ですね。“共犯”はソロ・アルバム(2012年作『眠る前』)を作ってる時に出来た曲で、〈これはLUNKHEADかな〉と」

――ここで“共犯”と言っている相手は?

「ファンのことですね」

――この曲も一つ大きなテーマだと思うんですよ。ファンとの信頼関係を軸にこれからも進んでいくよ、というような。

「去年(5月のツアー・ファイナルを最後に)〈このあとしばらくライヴをやらない〉と言った時に、どうしても不安になっちゃう子たちがいて、その子たちに向けて歌いたかったんですよね。〈心配するな〉的なことを」


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掲載: 2013年09月18日 18:01

更新: 2013年09月18日 18:01

インタヴュー・文/宮本英夫