LONG REVIEW――LUNKHEAD 『メメントモリ』
LUNKHEADは確かにここで生きている
「(2013年には)賭けに出る」との宣言を残し、約1年に及ぶライヴ活動の休止期間に入っていたLUNKHEADが直面したのは、黎明期からバンドと共に歩んできた所属事務所の社長、ボビーこと湯浅壮太氏の急逝だった。死は崇高なものだと言い聞かせるのは簡単だが、そんな言葉で新たな人生が開かれるほど現実は容易くはない。両者の熱い信頼関係を知るからこそ、その事態に狼狽もしたが、ニュー・アルバムのタイトルが『メメントモリ』になると知ったとき、それまで胸につかえていた感情が浄化されるような感覚を抱いた。そして、ようやく届いた新作に触れたとき、その思いはより明確になった気がする。
インストゥルメンタルの“メメント”に続く実質的なオープニング・トラック“閃光”が流れはじめた瞬間、紆余曲折のあったLUNKHEADの歩みが一気に脳裏を駆け巡る。彼らが紡ぎ出すメロディーが導くのは、決して感傷的な涙だけではない。さまざまな感情が溢れ出ていながら、一方では冷静に自分たちを見つめているようなニュアンス。あたりまえのように奏でられる楽曲群には、むしろ遺作のような感触すら覚えるほどだが、メンバーはこちらの予想を遥かに超えた未来を見据えていたのだろう。高らかに自己主張をする4人の音と声。これらが丸みを帯びて融合するのではなく、鋭さを保ったまま並立していくのである。ここは作り手の意識とは別次元の力が奇跡的に作用した可能性もあるが、個々に研ぎ澄ませた純度の高い音塊が、はっきりと孤高さを実感させる。
ボビーとは「代表作を作ろう」と話していたという。その主たる評価はリスナーに委ねられるとはいえ、本作を完成させたことで、メンバーもみずからその使命を負うことになったかもしれない。エンディングの“幻灯”に耳を傾けながら改めて思う。LUNKHEADは確かにここで生きている。
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