LONG REVIEW――LUNKHEAD 『青に染まる白』
全11曲のなかで、最初に届けられたのは先行シングルとなった“果てしなく白に近づきたい青”。〈生命〉という巨大なテーマに力強く斬り込んだ前作から一転、この新作『青に染まる白』におけるソングライターの小高はふたたび迷っている。むしろ迷い自体を、潔く吐露している。
LUNKHEADは2本のギターとベースとドラムスのみで構成されるギター・ロック・バンドだが、笑えるほど(褒め言葉)にテクニカルなリフとエフェクトを駆使し、サウンドそのもので星々が煌めく宇宙も、沈みゆく夕陽も、暗闇のなかで揺れる波間も描き出す。そんな4人が本作に投影したのは、〈生きる〉という行為そのものである。
実在の人物名を曲名に冠して淡い恋の季節を歌った“みゆき”から、広い世界のなかで現れては消える命に想いを馳せた“群青の降る夜”“無限光”まで――〈記憶〉から〈想像〉までを内包してつまびらかにされる、主人公を中心とした半径数メートル以内の風景。そんな日常のなかで思い知る、己の未熟さや、やり場のない哀しみ。そうした〈青さ〉を滲ませたブルースを、小高はダイナミックにうねるロック・サウンドに転化する。
その手法はつまり、このバンドにとっては原点回帰とも言える……のだけれど、ここにいるのはやはり〈いま〉のLUNKHEADであり、その象徴が先述した“果てしなく白に近づきたい青”ではないかと思う。泥臭くもがきながら自身を取り戻そうとする様を、激しくて、性急で、それでいて途轍もなく開放的でメロディアスな楽曲に乗せて、小高は威風堂々と歌う。大サビで放たれる言葉と音の一体感、その抜けの良さにグッとくる。
人の成長に伴って纏う汚れを〈青〉と表現したタイトルも実に彼ららしい。今作は、現在の4人の力量をもって自分たちの本質を改めて提示したアルバムだと言えるだろう。