INTERVIEW(2)――メロディー・シンガー
メロディー・シンガー
そうしたメッセージ性と素直な歌声を柱としながら、サウンドにはポップ・ミュージックという広い海のなかで、曲ごとに自由奔放なアプローチが施された。特に、囁くようなヴォーカルがコケティッシュなムードのサウンドとじゃれ合うような“ブレイクスルー”や、ループするビートの上で跳ねたり伸びたりするようなメロディーを歌いこなす“パラレルナイト”、ノイジーなギター・サウンドが切ない夜の風景を切り取る“月の裏側”など、曲ごとのドラマを演じ切るヒロインとして、Salyuはこれまで以上の存在感で音楽のなかに声という光をもたらす。
「例えばsalyu × salyuというオルタナティヴな音楽もやらせていただいたことで、〈多くの人に届くポップ・ミュージックをめざす〉という、Salyuとしての価値もわかった。いろんな経験を経たことで、いまはSalyuという〈メロディー・シンガー〉として、自分が光を浴びられる時にやるべきことっていうのが、明確になったんだと思います。そういう意味で私も小林さんもすごくピントが合っていたし、ハイエナジーな作品が作れました」。
そんなアルバムに相応しく、付いたタイトルは『photogenic』。この言葉に込めた想いを彼女は嬉しそうに語ってくれた。
「〈写真映りがいい〉という意味なんですけど、これはすごくポップ・ミュージックを表現してる言葉だなと思う。だって短い時間でどれだけ人を魅了できるかが、ポップスだと思うから。一瞬のなかで光のような素晴らしいフォルムであること、それはすごく音楽的なことですよね」。
聴けば聴くほどに人の心に馴染んでいくような、そんな普遍性をも持ち合わせた今作。3月からスタートする全国ホール・ツアーでも、Salyuにしか放てない光溢れる歌を通じて、多くの言葉を語りかけてくれることだろう。
- 前の記事: Salyu 『photogenic』
- 次の記事: LONG REVIEW――Salyu 『photogenic』