INTERVIEW(4)――整理された音楽をやろうと思ってなかった
整理された音楽をやろうと思ってなかった
――挫折というのは、竜太朗さんのなかのバンドの理想像に関して?
有村「うん。みたいなものはけっこうありましたね。書けることも書けないこともありましたけど、書いちゃっていいですけどね。よくわかんない人がバンドの運営資金を持って逃げたりとか」
――おっと……海外では……日本でも、時々そういう話を聞きますけどね……。
長谷川「まあそんなことがあって(笑)」
有村「ホント、〈挫折〉の一言で勘弁してくださいっていうほどに挫折があった。自分的にも、環境的にも。理想がデカすぎたのかもしれないけど……人が関わってくるからちゃんとなるんだろうと思ってたら、逆だった(苦笑)。だったら関わんなきゃよかったな、とか。でもそういうこともわからないぐらい子供だったんですよね」
長谷川「だから、なんかイマイチ整理できてなかったところが正直あって。言ってしまうと、自分のなかでは『Hide and Seek』は中二病っぽいところがあって」
有村「そうだよね」
長谷川「たぶんね、整理された、キレイな音楽をやろうと思ってなかったんですよ。どこかイビツで、聴いたら頭にこびり付いて離れないような、そういう音楽をすごく一生懸命にやろうとしてた。メジャーのシーンに立つことで、それをいろんな人に伝えられるようになるだろうし、バンドのスタートラインにようやく立てるのかなっていう意識があったんですけど、その当時自分がやろうとしていたものとメジャーのシーンは果たして相容れるものなのだろうか、みたいな、インディーズで超カルト・バンドみたいになったほうがホントは格好良いんじゃないか、みたいなとこも正直ちょっとあって、だからそういう意味でも中二病ですよね(笑)。けっこう排他的で、他のバンドの音楽も一切聴かなかったし、シーンもあんまり意識してなかったし……そういう部分が整理できてなかったから〈うわーっ!〉ってなっちゃったりとか」
長谷川正
――それで楽屋裏が大騒ぎに(笑)。
有村「それは俺の個人の、心のなかですけどね(笑)。本当の楽屋は静かなものですよ。シーンとしてますから」
長谷川「水を打ったようにね(笑)。だから、そういう部分もあったんじゃないですかね。そこでグラグラしてる、っていう」
――そういう部分が音楽にも出ていたり。
長谷川「ちょっとその不安定感というか、ざわざわする感じとか、うん」
有村「一言で言うなら悩みながらやってたんですよ。それが思いっきり露呈してるデビュー・アルバムだから、それにいま向き合えるっていうのは、俺らからしたら15年やってきたことへのご褒美に近いというか。当時の録音したもののなかに一瞬戻れるというか」
――悩みながらやっていたことへの回答を、今回のシングルで出せたと。
有村「そうですね。当時の自分のことは自分がいちばんよくわかってるから、そのときの悔しかった想いだとか、音楽的にもこういう想いでやってたよなっていうのをもう一回見てあげるというか。そういう、いい機会でしたね」
15年やってきたことへのご褒美
――そこを見直せるというのは、15年間、とにかく前に進んでこれたからっていうのもあるんでしょうね。
有村「そうですね。これがね、一回解散して再結成してとかだったらたぶんできなかったと思うんですよ。だって、当時の自分にいまの自分は絶対叶わないし、ってなっちゃうと思うんですよね。時間の経過ってそういうことだから。どう過ごしてきたかってことですから。悩みながらやってようが何だろうが、そのときの記録だから、もう勝てないな、って。それが、いまここで再構築できるのは、この曲をずっとライヴでやったり、モノ作りもずっとやってきたからで。だから初期衝動とは違うところで、この作品にもともと備わってる存在の意義みたいなのを、いまの表現でやれてるっていう。そういう意味でもまあ、自分のなかでこの再構築はご褒美みたいな感じがあるんですよね」
――そしてこの先は……制作は常に行っていらっしゃるような感じですよね。
有村「そうですね。今年はモノもなるべく出せるなら出したいなと思ってるんで、ちょうどいまは、それに向けて準備をしてて。春からはツアーで、俺らはあんまりいろいろ同時にやれるタイプじゃないから……とは言いつつやるでしょうけど(苦笑)」
――(笑)がんばってください。ツアーは3月からで、4月は……。
有村「武道館。それまでにデモ作りをしてるような感じですね」