INTERVIEW(2)――自分が勝負できるフィールド
自分が勝負できるフィールド
——以前もピアノやストリングスが禁止されてましたよね。
「そうなんです。それと同じですね(笑)。最初は足かせをつけることでクリエイティヴなことができるかと思ったんですけど、だんだん僕のDJ心がうずいてくるんですよ! 例えば、打ち込みだけでヒット曲を中心に2時間っていうのは居心地が悪いし、気になる作品のリリース自体も少なかったのもあって、古いものでまだ知らないカッコイイ曲を探すようになっていったんですが、その時にセオ・パリッシュのDJを聴いて改めて衝撃を受けたんです。彼はすごく小さなパーティーにインスパイアされてエネルギーにしているってインタヴューで明言したんですけど、僕はそこにすごく共感したんですよね」
——THE ROOM出身のKAWASAKIさんには共感することも多いんでしょうね。それで……?
「こっそりかけていたんですよ、沖野さんが来ていないの確認して(笑)」
——アハハハ! こっそり(笑)。
「はい。ディスコかけてお客さんが引いたらまた自粛しようと思ったんですけど、だんだんお客さんにも受け入れられるようになってきたんです。で、ディスコやブギー再燃の流れもあったし、じゃあディスコをかけて盛り上がってるところをなんとか沖野さんに見てもらおうと思って、がんばって逆らってみたんですよね」
——KAWASAKIさんってかなりの負けず嫌いなんですね。
「ええ(笑)。で、実際に見ていただいて、ディスコで盛り上がるようになったねという雰囲気になったのでディスコのカヴァーをやろうと思ったんです。カヴァーを作ることによってプレイに説得力も出るだろうし、これを作ることによってディスコをかけるDJと認識されるというのもいいと思った。ただ、口で言うのは簡単ですけど、ようやくここまできたって感じはありますね」
——結構苦しかった時期だったんですか?
「いや、正直そうですよ。かける場所もTHE ROOM以外は本当に少なかったですからね。それに当時僕が招かれていたパーティーでは、共にジャパニーズ・ハウスを盛り上げていたDAISHI DANCEくんやFreeTEMPO・半沢(武志)くんといっしょだったりすることが多いんですけど、僕みたいに古い音楽をかける人っていないんです。だから、それでお客さんが引いちゃうと本当に辛い。自分の曲をプレイすればフロアに戻ってくるけど、そうじゃなくて古い曲もプレイする自分のスタイルを丸ごと認めてもらいたいって気持ちもあるじゃないですか!」
——自分ならではの選曲でお客さんを引き込んでいくというDJとしてのプライドですよね。
「そうです。クラブでのプレイは常にライヴァルとの勝負ですし、引かれちゃうと本当に悔しい。だからこそ古い曲を違和感なくプレイして受け入れられているカール・クレイグやセオ・パリッシュを見て、決して自分は間違っていないって確信があったのは本当に大きかったんです。それからはもう修行ですよね。前回セオが代官山Airに来た時にオープンから行って……」
——オープンから遊びに行くトップDJってすごいなあ。
「スタッフの人に驚かれました(笑)。で、セオのDJを最初から見て研究したんですよ。〈1曲目からこうくるか!〉〈え? ピークタイムでレゲエをかけちゃうの!?〉って驚きがいっぱいあった。もちろんセオだから成立する部分もあるんですけど、それでもやっぱりああいうミックスでお客さんが楽しんでいるのを確認すると、本当にいい曲とそれを聴かせる自信とテクニックがあれば、ジャンルは関係なしに伝わるんだって思えたし、そこにこそ自分が勝負できるフィールドがあるんじゃないかなって思えたんです。それが本当に嬉しかったんですよね」
——KAWASAKIさん、無茶苦茶アツいですね。
「いまではパソコンのなかからすぐに盛り上がる曲を探し出してDJができるじゃないですか。でも、与えられた時間にアーティスティックなことをしたいし、流れを考えて聴き終わった後に、この人違うなっていうイメージを付けられるのがプロとアマの違いだと思うんですよね。僕のDJ観ですけど、それは貫きたいと思っています」
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