コトリンゴ『La memoire de mon bandwagon』
[ interview ]
自由奔放にピアノを奏で、小鳥の如く軽やかに歌うシンガー・ソングライター、コトリンゴ。彼女の2年半ぶりとなるオリジナル・ミニ・アルバムが完成した。タイトル『La memoire de mon bandwagon』とは、フランス語で〈私のバンドワゴンでの思い出〉という意味だ。
今回いっしょにバンドワゴンで旅したのは、村田シゲ(□□□、Cubismo Grafico Five、Circle Darko)、神谷洵平(赤い靴)の2人。コトリンゴは2011年春からベースに村田、ドラムスに神谷を迎えたトリオ編成でライヴ活動を重ねてきた。そして、息がピッタリ合ってきたところでレコーディングに突入——〈バンド〉をテーマに制作された新作は、彼女の新境地とも言えるカラフルでパワフルな作品に仕上がった。果たして3人を乗せたバンドワゴンはどんな場所に辿り着いたのか。コトリンゴに話を訊いてみた。
リズムをフィーチャーしたかった
——新作は、村田シゲさん、神谷洵平さんと、初めてバンド編成でのレコーディングになりました。これまでライヴはいっしょにやられていましたが、レコーディングはいかがでした?
「すごく楽しかったんです。収録曲のうち、“みっつの涙”“Life” “Ghost Dance”はライヴで何度もやってから録音しているので、曲の感じをだいたい掴みつつ、そこから自由に演奏することを楽しめました。そして、それを美味しくレコーディングできたと思いますね」
——ベーシストとドラマーが加わったのは、リズム・セクションに対するこだわりから?
「そうですね、私はリズムがそれほど得意ではないんですが、今回の作品はリズムをフィーチャーしたかったんです。タムをいっぱい叩くパターンだったり、スネアをいっぱい重ねたりとか。レコーディングの前に神谷くんにはそういう話もさせてもらって」
——やはりレコーディングはコトリンゴさんが全体を仕切るんですか? そういうタイプじゃないような気がして(笑)。
「あんまり仕切れないんです(笑)。〈これは絶対!〉とか〈それはダメ〉っていうか、絶対譲れない領域はあるんです。でも、それ以外だとわりと何やってもらってもOKというか、自由にやってもらいます。〈それはないな〉と思った時は言うんですけど、そういう時には気配を察してシゲさんが仕切ってくれたりして(笑)。以前は、周りのミュージシャンには〈言わないけど、わかってくれますよね?〉っていうスタンスだったんですけど、それだとメンバーが変わると伝わらなくなってしまう。最近ではシゲさんのアドバイスを受けて、いろいろ言えるようになりました」
——村田さん、かなり頼りになる存在ですね。
「シゲさんはレーベルメイトなのでずっと昔から知り合いだったというのもありますし、考えたうえでちゃんと意見を言ってくれる人でもあるんです。離れた立場から全体を見て意見をくれるから、すごく頼りになりますね。私は結構人見知りしてしまうほうなんですけど、シゲさんと神谷くんだと何でも言えるし、伸び伸びと演奏できるんです」
——村田さんと神谷さんの2人のパートに関しては、それぞれ自由にやってもらうんですか?
「そうですね。まずレコーディング前にデモテープを渡して、〈こういう感じ〉っていうのを伝えておくんです。でも、ドラムとかベースのパターンとかはちゃんと入れてないんで、曲のイメージだけ伝えて後は2人に任せます。それでちょっと違ったら話をして、いろいろ試しながら作っていく感じですかね」
——なるほど。今回収録された曲は3人でやることを前提に作られた曲なんですか?
「デモを作っていた時は、3人というのは想定していなかったんですけど、バンドでレコーディングすると決めてからはライヴで演奏していくなかで形がかっちり決まっていきました」
——すべての曲が繋がっているような、流れを感じさせるアルバムですね。
「“みっつの涙”“Life”“Ghost Dance”は最初から入れたいと思っていて。そこにいちばん最近出来た“Today is yours”を加えたら、なんとなく自然に流れが出来ました」