INTERVIEW(3)――この2人だったから思いきりできた
音楽の力は大きい
——“Life”は英語詞ですが、歌詞の内容は東日本大震災以降の日本を思わせる内容ですね。〈私達の暮らしはどこへ行ったの?〉とか。
「歌詞を書いていたのが震災の後で、何をやってもそっちに引っぱられちゃって悶々と考えていたんです。日本語で歌詞を書いていたらもっとオブラートで包んだような内容になったかもしれないけれど、英語なので単刀直入な感じになりました。英語だから書けた、というのもあるかもしれないですね。そういえば、2つの言語を喋る人って、2つ人格があるらしいんです。得意な言語で考えたり話したりする時の人格は大人で、あんまり喋れない言語のほうはちょっと子供っぽくなるそうなんですよ。私もそうかもしれない」
——ちなみに震災直後はどういう状態だったんですか?
「やっぱり、一週間くらいはTVのニュースに釘付けになっていましたね。それでどんどん気が沈んじゃって。このままじゃダメだと思ってTVを消して、ミルズ・ブラザーズとかアンドリュー・シスターズとか古い音楽ばかり聴いていたんです。そしたら、だんだん気持ちが落ち着いてきて。3月の終わりくらいにはライヴをやれるようになりました」
——まだ余震もあった時期ですよね。
「そう。ライヴする前も〈いまここで地震があったらどうしよう?〉とか考えちゃうと怖いんですけど、それでも観に来てくださる人がいて、自分が好きな音楽を演奏する場所があるんだから、と思って。あと、自分の歌詞が全然それまでとは違った意味で聴こえてくるようになったりとかして、しばらくはちょっと大変でしたね」
——ああいう時期だけど、ライヴに行って音楽を聴くことで気持ちが落ち着いた、という人も多かったみたいですね。
「まずは食べるものとか住む場所とか、生活の基盤が出来てからのことだとは思いますが、音楽の力って大きいな、と思いました」
この2人だったから思いきりできた
——“Life”に続く“Ghost Dance”はアルバムのクライマックスって感じですね。ものすごくパワフルでライヴ感に溢れてて。
「“みっつの涙”“Life” “Ghost Dance”は3人でいっしょに演奏して録ったんですけど、特に“Life”と“Ghost Dance”はテイクを重ねたんです。“Ghost Dance”は最後のテイクで〈もう、これ以上は無理!〉ってなっちゃって。ピアノをガンガン弾きすぎて手が痺れてしまったんです(笑)」
——3人とも思いっきりプレイしてますよね。
「すごく巧い人とやれる機会があったとしても、自分が心を開いてなかったら思いきりできないと思うんですよ。あの2人だったから何も気にせずあそこまでできたんじゃないかな、と思ってます」
——この曲はどんなふうに生まれたんですか?
「ケーブルTVで観て知ったんですけど、〈ゴースト・ダンス〉はアメリカン・インディアンが死者を奉るための儀式なんです。開拓時代に、白人たちが〈ゴースト・ダンス〉を止めさせようとしてインディアンとの間に争いが起きたらしくて、そういう歴史を紹介したTVドキュメンタリーを観ておもしろいな、と思って。あと、それを観た頃に、立て続けに祖父母を亡くしたんです。身内を亡くしたのは初めてのことで、お葬式とか火葬の手順とか、そういう段取りのひとつひとつが不思議で仕方なかったんです」
——そういう日本の葬儀の儀式と、インディアンの儀式のゴースト・ダンスのイメージが重なった?
「なんか、おじいちゃん怒っちゃうかもしれないですよね(笑)。私は小さい頃に鳥を飼っていたんですけど、死んだらお庭に埋めるじゃないですか。そしたら鳥は土に戻って、そこに植物が生えて、その植物に実がなって、それをどこかの鳥が食べて……っていうことを考えた時、人間も骨になって土に還ったらその骨の成分には虫の成分が入ったり、いろんな成分がミックスされるんだろうか。なんかそういうのがおもしろいなと思って、そういうことを曲に書いてみようと思ったんです」
——死をテーマにして、こうした力強い曲が生まれるのもおもしろいですね。
「私、悲しい歌を書いちゃうと泣いて歌えないんじゃないかなっていうのがあって(笑)」
——ドラムのビートとか、ちょっとトライバルな雰囲気の曲ですが、サウンドはどんなイメージだったんですか?
「1本の木があって、その周りでみんなが太鼓を叩きながらグルグル回って踊っているような感じかな」
——リズミカルな?
「そうですね。後はコロッて場面転換するところを入れたくて。なので、普通に進んでいってコロッて場面が変わって、また戻って終わるみたいな曲の構成にしたんです」
——ライヴでは盛り上がりそうな曲ですね。
「そうなってくれるといいですね。私のお客さんって、わりとおとなしい方が多いので、あまり〈ウォーッ!〉とはならないんですけど(笑)」
- 前の記事: INTERVIEW(2)――村田シゲは生徒会長タイプ!?
- 次の記事: INTERVIEW(4)――次のアルバムも3人で