インタビュー

LONG REVIEW――cro-magnon 『THE BEST』



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cro-magnonは2004年の結成以来、ジャム・セッションでグルーヴを紡ぎながら、ダンスフロアで流れるその時々のグルーヴを楽曲に変換してきた。ジャズ・ファンクからディスコ・クラシックス、アシッド・ハウスなど、前身のLoop Junktion以上にネタ遊びの感覚はより自由度を増してきている。

例えば、セカンド・アルバム『Great Triangle』での大ヒット曲“Riding The Strom”は、キッスのロック・ディスコ“I Was Made For Loving You”あたりのスキャットを匂わせながら男気あるギター・リフで突き進む(本ベスト盤では、イジャット・ボーイズによるダブ処理全開のリミックス版も聴ける!)。有坂美香をフィーチャーした“survivor”では、ガラージの定番曲であるグウェン・ガスリー“Seventh Heaven”を、“Sign of Fire”ではサルソウル古典のコニャック“How High”のベースラインがいい具合に引用されているし、カウベルを逆回転させている“Hypnotised”は、当時ダンスフロアでリヴァイヴァルしていたノーウェイヴのリキッド・リキッドあたりに刺激を受けたはず。また、4ビートのジャズ・ループが基調になる“Swinger than doubt”はサン・ジェルマン“Rose Rogue”や、イタロ・ボーイズあたりのジャズ・サンプルによるミニマル・ハウスを一級の腕で料理したようにも思える。

いまや海外でも名を知られる3人だが、このDJ的なネタ感覚と、この時代にあって過度なエディットを潔しとせず、ライヴ感あるレコーディングをしてきたことは彼らの作品における一貫した魅力で、今回のベスト盤でも改めてそれを体感できる。そして、再始動後もこの〈集い、遊び、セッションする〉というライフスタイルは決して変わらないのだろう。盟友・三宅洋平のリリックがまさに、メンバー3人の姿を見事に言い当てている。

〈思い出すのは昨夜のセッション。俺たちのたまり場、桜坂の皆の部屋。グルーヴを足した、掛けた、また足し掛けた、最後にそれを人数で割った。刹那、刹那、を生きているようで地続きの円を生きているんだ。大丈夫、俺たちはまた戻って来れる〉(“Tokyo Times”)。


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掲載: 2012年04月18日 18:00

更新: 2012年04月18日 18:00

文/シャイ川崎