DOES 『KATHARSIVILIZATION』
[ interview ]
氏原ワタルの持つソングライターとしての力、わけてもメロディーメイカーとしての才能の大きさは知っていたつもりだったが、これは本当に別格だ。DOESの5枚目のフル・アルバム『KATHARSIVILIZATION』は、パワー・ポップやダンス・ロックの衣装を纏ったキレの良いタイトなバンド・サウンドに、一発で記憶の襞にこびりつくキャッチーなメロディーと、氏原の内面にある精神的なメッセージをそのまま吐き出したストレートな歌詞が相まって、全体の印象は非常に陽性でパワフルなもの。これまでDOESをあまり知らなかった人にこそぜひ一度耳にしてほしい、幅広い層に向けて大きく扉の開かれた作品だ。
〈伝える〉ことがコンセプト
――素晴らしいアルバムだと思うんですけども、良い意味で〈変わったな〉という感じがするんですよね。いままでにない明るい陽性のパワーに満ち満ちていて、月並みですが、聴いて元気が出ました。
氏原ワタル(ヴォーカル/ギター)「そこは本当にコンセプトとしてありました。伝えることによって元気になってもらって、そうすれば、もちろんウチらも元気になれるし。震災が起きたから、その思いが強くなったというのはあるんですけど」
――ああ、やはり。
ワタル「〈明るいアルバムにしたいね〉という話は、もともとしてたんですよ。明るいほうがみんな取っ付きやすいし、ロック好きのみならず、その他の音楽ファン、あるいは音楽を知らない人にも。そういう〈伝える〉ということがコンセプトにあるアルバムですね」
――サウンドの話からしていきますけど、いわゆるパワー・ポップ感も強く感じたし、ソウルフルなダンス・ロックとか、あるいは60年代のアメリカン・ポップスとか、そのへんまで遡ることのできる普遍性があると思うんですよね。そのへんは、もともと好きなんですか。
ワタル「オレはいろんな音楽を聴いてきたんで、いろんなところからバンバン自分の音楽に引き込めるんですけど。逆に、たとえばパワー・ポップが流行ってる時には、パワー・ポップをやらないんですよ。ダンスものが流行ってる時には、ダンスものをやらない。他の人がやってることは、他の人がやってればいいだろうという考え方をしちゃうんで、そういうところをちょっとだけ破ったというか。〈わかりやすさ〉ということが念頭にあったんでね、“今を生きる”とか、モロにパワー・ポップだから」
――それはもう。見事なパワー・ポップですよ。
ワタル「やろうと思えば簡単にできるんですけどね。なんかこう、捻じ曲がってるというか……(笑)。でも今回はわかりやすく、特に被災された方とか、元気のない日本に、いまこそ何か伝えるべきだと思っていたから、簡単にする必要があったんですね。楽曲的なフォーマットにしても、言葉にしても。だから、ウチらのことをそんなに知らなかった人にでも、入りやすいアルバムになってるんじゃないかなと思います」
――ヤスさんは、個人的に、今回みたいなタイプの音楽は得意ですか。
赤塚ヤスシ(ベース/コーラス)「僕もけっこういろいろ聴いてきたんですけど、こういう明るい曲のほうが親しんできたというか、元からあるものなので。さっき言ってもらった陽性のパワーというか。特に“今を生きる”は、自分のなかでは懐かしさを感じたし、それが現在進行形になってオレたちの音になってるみたいな感じで、逆に新鮮でしたね」
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