インタビュー

INTERVIEW(3)――簡単には売れねえんだ……



簡単には売れねえんだ……



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――そしてSTARDUST REVUEとして81年にデビューされるわけですね。そのときはどんな野心を抱いてました?

「デビュー・シングルの“シュガーはお年頃”が、シチズンのCMソングに使ってもらえたんです。しかもその音は誰に聴いてもらっても大絶賛。みんな〈お前らみたいなバンド、聴いたことがない!〉って褒めてくれる。そんな感じだったんで、これはイっちゃうかも~なんて思ってた。いまだに覚えてるけど、デビュー・シングルとアルバムのチャート予測をメンバーでやったんです。みんな心のなかでは、1位だって言いたいわけですよ。でも、〈まあ6位か7位ぐらいじゃないか?〉なんて言ってた。するとベースの柿沼が、〈そんな甘いもんじゃねえよ。簡単には売れないんだから〉って。彼の兄貴が〈がむがむ〉ってバンドでデビューしていたから大変なことはよく知っていたんだね。〈そういうお前は何位だと思う?〉って訊いたら、〈う~ん、15位かな〉って言ってましたけど(笑)、蓋を開けてみたら200位にも入らない。あれ? これはどういうこと?……と考えたわけです。その瞬間、僕は気持が切り替わりました。そうか、簡単には売れねえんだ……と」

――ありゃ~。

「そりゃそうだよね。確かにがんばってプロモーションしてもらったけど、ほとんどの人が名前すら知らないはずだし。それによく考えてみれば、俺たちが目標にしていた音楽、例えばはっぴいえんどやシュガーベイブ、ムーンライダースにサディスティック・ミカ・バンド、センチメンタル・シティ・ロマンスとかは、一般的には売れてない人たちばっかりで(笑)。僕らがデビューした80年頃にやっと世の中が(山下)達郎さんや大滝詠一さんのすごさに気付いた感じで、その当時はユーミンさんぐらいしか一般的に有名な人はいなかったもん。だからそういう人たちを聴いて影響を受けた俺たちが、簡単に売れたらおかしいだろって(笑)。そうだな、俺たちは出ようとしていた世界が間違っていたんだ。やっぱり俺たちはTVとかじゃなくライヴハウスでチマチマやるバンドなんだ、っていうふうに変わっていったんです」

――デビュー・アルバム『STARDUST REVUE』を聴き直して、不思議な音楽性を持ったバンドだなと思いましたよ。ノスタルジックなムードの歌謡曲調やシティー・ポップ調などが混ざり合ったおもしろい世界が広がっていて。

「そうそうそう。僕はず~っと洋楽バカだったんだけど、日本のポップスから最初に影響を受けたのがはっぴいえんどだったんですよ。特に細野(晴臣)さんの世界に惹かれたんですね。彼の『トロピカル・ダンディ』とか『泰安洋行』に、すごくヤラれた感があって。その頃、キャラメル・ママと雪村いずみさんがコラボしたアルバム『スーパー・ジェネレイション』にも出会ったんだけど、まさにこの世界だ!とぶっ飛んじゃって。憂いもあれば楽しさもあって、しかも演奏はスウィングしてるし、インプロヴィゼーションもたっぷり入っている。それを聴いて僕らのバンドはガラッと変わり、それから“シュガーはお年頃”のようなタイプの曲を書きはじめて。そのヘンな感じの曲が耳に留まった人もいるんでしょうね」

――なんとも捉えどころのないバンド、って感じがあのファーストにはありますよね。

「おそらくそれはいまもそうなんだと思いますよ。はっぴいえんどを起点とする日本のロックの系譜ってあるじゃないですか。僕らは、そのミュージシャン・ツリーのどこにも入れてもらったことがないわけですよ」

――そういう実感があるんですか?

「僕はよく言うんだけど、STARDUST REVUEは〈志の低いムーンライダースのようなバンド〉だと(笑)。戦後の日本を明るくしたジャジーでポップな歌謡曲を作る服部良一という人の音楽に触れて生まれた僕らの音楽を、スタッフは〈これおもしろいから売れるんじゃない?〉と歌謡界に持っていこうとしたんだと思うんです。おそらく普通にやっていればもうちょっとマイナーなところにいたはずの僕らは、TVとかの土俵に進んでいくことになって、それでも売れないからライヴをひたすらやるようになって、結局いまの独自路線。これはこれでとても満足してるけど、はっぴいえんどから始まる系譜には入れてもらえない。ちょっと悔しいな、僕は」


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年08月22日 18:00

更新: 2012年08月22日 18:00

インタヴュー・文/桑原シロー 写真提供/アップ フロント ワークス