INTERVIEW(4)――〈水面下〉に誇りを持ってるバンド
〈水面下〉に誇りを持ってるバンド
――その後、〈カルピス〉のCMに使われた5枚目のシングル“夢伝説”で注目を浴びる機会がやってきますよね。
「確かに、使っていただいたおかげで世の中からは多少認知されましたね。でもヒットというほど売れたわけじゃないんです。きっと長いことやっているから聴いたことがあるとか、聴いた気になっていたりするんでしょう(笑)。確かに“夢伝説”以降全国ツアーができるようになりました。それまでのライヴと言えば、東名阪のライヴハウスで、そのくらいのキャパなら何となくいっぱいになってて、それで満足してました。実際目の前のお客さんしか見えてないから、ライヴハウスに人がいっぱいで俺たちスゴイじゃん!って思ってたわけですよ。当時こんなことがありました。よく新宿のRUIDOに出ていたんです。その頃のRUIDOといえば、シャネルズとか佐野元春がガンガンやっていた頃。僕らもやっと300人ぐらい集められるようになって。あのスペースで300人っていったらもうギュウギュウですよ。で、佐野さんはあそこで2デイズやったりする。そうなったら一流だ、なんて言われたりして。で、ブッキングの人に2日間やってみろって言われて、〈いよいよ俺たちの時代か!〉なんて盛り上がってたんだけど、蓋を開けてみたら2日間きれいに150人ずつ分かれただけ(笑)。なんだよ、俺たち300人が精いっぱいなのかよってね(笑)。でもこれは十分すごいんじゃねえの?って思いました。正直、ライヴハウスぐらいのキャパをちゃんと埋められて、生活ができるのであれば僕らにとって幸せなんだと思っていた時代ですよ」
――売れたいというよりも何よりも。
「毎日演奏したいって気持ち。とにかく〈目標は売れること〉ってず~っと言われてた。ここ10年ですよ、言われなくなったのは。僕らが独立してから5~6年後に社長に言ったんですよ。〈何が幸せって、シングルを売れって言われなくなったことがホントに幸せです〉って。ヒットを飛ばすことが音楽業界のいちばんの金字塔というのは、とてもよく理解できます。ただ出そうとして簡単に出るもんじゃない。90年代とか、武道館を3日間やってても、みんな頭のなかではどうやったらシングルが売れるんだろう?って考えてたと思うんです。でも僕は売れるシングルを作るより、いいライヴをやればいいと思った。そう考えることでそのときのスタレビは納得できた。だから僕らのレッテルはひたすら〈売れないバンド〉。デビューから30年間、ずっと水面下。自虐的なギャグで言ってるように思われるけど、僕は自虐だと思ったことなんて一度もない! あくまでも冷静な目で自分たちを判断しているだけ! でも、それでいいんだよね。スタレビは音楽活動するために作ったバンドで、売れるために作ったバンドじゃない。そして俺たちの音楽活動の基盤は絶対ライヴにある。〈水面下〉に誇りを持ってるバンドなんです」
――(苦笑)。
「それでも、スタッフのがんばりにはずっと感謝してきました。実は10年目にベスト・アルバム『Best Wishes』をリリースしたとき、いまのうちの社長が当時ワーナーの宣伝をやってくれてたんですけど、ものすごいニコニコ顔で〈アルバム何位だったと思う?〉って訊いてきたわけです(笑)。え~、そんな顔されたら困っちゃうな~、〈じゃあ1位ですか?〉って訊いたら、ちょっとムッとして〈2位だよ、すごいだろ〉って自慢げに言うわけですよ。でも俺たちは、やっぱりな~……ってうなだれるわけです。正直何位だって僕らにはどうでもいいことだけど、スタッフに喜んでもらうには1位になることしか頭になかったから。とにかくスタッフの期待に応えたかった。だから2位って言われたとき、すかさず、〈1位は誰?〉って訊いたくらい」
――で、誰だったんですか?
「WINKだった(笑)」
――そりゃ手ごわい(笑)。
「そう、みんな納得ですよ。勝てるわけがない(笑)。でも僕は正直興味なかった。こんな楽しい音楽活動を続けられていて、僕は何の不満もなかったし。デビューから30年間、音楽をやるうえで不満を持ったことなんて一度もない。スケジュールがボンボン入ったって辛いと思ったことないし、毎日歌えって言われりゃ歌う。だって音楽やりたくてプロになったんだから。ただ20年間近く、〈どうしたら売れるんだろう?〉って言われ続けてきたことには、ちょっと悩んだな。がんばってくれているスタッフに、〈良かったなあ〉って言われたくて、がんばってきたようなもんだからね」