インタビュー

INTERVIEW(3)――お客さんが楽しかったと思えばそれでいい



お客さんが楽しかったと思えばそれでいい



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――例えば同期のバンドなんかに仮想敵を作って、こいつらだけには負けねえ!みたいにモチヴェーションを上げていくようなことはなかったんですか?

「その質問で思い出したんだけど、デビューして最初の地方のステージが81年6月、札幌の道新ホールでのライヴ。〈サウンド・キャンパス〉ってイヴェント・ツアーで、同じ事務所にいたBOW WOWが地方のアマチュア・バンドを何組か呼んでライヴをやってたんだ。デビューしたての僕らは、そのアマチュアの前座をやったんですけどね(笑)、まったくウケない。で、そんな時ってね、ウケないとお客さんに説教するんですよ(笑)。〈同じ人間としてその態度はどうなんだ!?〉って(笑)。〈わかるよ、だいたいSTARDUST REVUEなんて言われても知らねえもんな。でも俺たちも気持ち良くライヴをやって帰りたい。そこで提案だ、いま君たちの目の前に立っているのがサザンオールスターズだったらどうする? 試しに俺らをサザンだと思って盛り上がってみないか? よし、みんなノッてるか~!〉なんてやって、そこそこ盛り上がった(笑)。楽屋に帰って、汗拭きながら、何とか今日の責任は果たせたかな?ってホッとしてたら、三谷から〈あのさ、僕らサザンになりたいわけじゃないよね?〉ってすげえ怒られちゃって(笑)。そうか、今日のステージを盛り上げたことよりも、そっち側が問題だったんだと。俺としては、スタレビだろうがサザンだろうが、今日のステージをお客さんが楽しかったと思えばそれでいいかなって思ったんだけど」

――やっぱり、野心でメラメラ燃えるなんてことよりも……。

「楽しさが大事なんだよね」

――お話を伺っていると、そういうスタンスのメンバーたちをスタッフを含めた周りがうまく支えてきたんだな、ってこともわかりますね。

「とかくスタッフってバンドに勢いがある時、〈お前ら、ここが勝負時だから我慢しろ〉って感じでガーッとやる傾向にあるけど、僕らは我慢しないんでしょうね。やれても、結果どっかでトチってしまうに違いない。だからいつも、ちょっと無理する程度でやってきた。〈ここが勝負時だ〉って局面を嫌う傾向にあったんですよ」

――ハハハ。

「だって、いざ勝負って時に負けたら次の試合すらなくなっちゃうじゃないですか。だったら、勝負せずにいまの状態をキープできたほうがいいなと思っちゃう」

――ただ、やはりそれは珍しい性格かと。

「そうですかね(笑)。いま思い出したけど、86年に“今夜だけきっと”で注目されて、初めて〈夜のヒットスタジオ〉に出たんです。何たって当時の〈夜のヒットスタジオ〉は出れば必ずヒットが生まれるというくらいのお化け番組でしたからね。その時、所属事務所だった〈ヤングジャパン〉の代表の細川さんが僕のところに来て、ちょっとコワモテの人なんですけどね、〈要、お前な、『ヒットスタジオ』に出るってことはどういうことかわかってんだろうな。これに出ることで明日からの売り上げが変わる。みんなそうなんだ。お前もな、明日から人生変わるような歌うたってこい!〉って言われたんですよ。でも僕は〈できません!〉って即答しましたよ(笑)。昨日も一昨日も歌ってきたけど、そんなこと無理です。だって人生変わるような歌を歌ったことがないですもん、って。案の定、番組に出ても何も動かなかったし(笑)」



カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年08月29日 18:00

更新: 2012年08月29日 18:00

インタヴュー・文/桑原シロー 写真提供/アップ フロント ワークス