INTERVIEW(4)――音楽やってないときは〈タダの人〉がいい
音楽やってないときは〈タダの人〉がいい
――賭けをして財産を失うリスクを上手く避けてきたからこそ、30年間という長きに渡る活動が継続できたとも言えるわけですか。
「まあ自信のなさもあるんだけど、とにかく有名になることよりちゃんと音楽ができる場所を探してたんじゃないかな。これまでの活動において、自分以外の力で押し上げられることを極端に嫌ってきた気がします。タイアップ曲をやらせてもらうこととかは、とてもありがたかったし、選ばれた喜びもあった。でも実際の姿が倍以上に見えてしまうようなことにはものすごく気をつけてきましたね。もし昨日まで100人しか集まらないライヴをやっていたバンドに、いきなり1000人が押し寄せたら、〈こりゃ何かある。危険だぞ〉と思うタイプですね、僕は。そうなると、もともといてくれた100人に対しての演出とは違う演出をしなきゃならなくなる。それは本来のスタレビとは違うものになってしまうかもしれない。もちろんお客さんが増えるのは大賛成だけど、自分が理解できるくらいの増え方がいいですね」
――は~、なるほど。自分たちを大きな存在だとあえて錯覚することで、前進する力を得る……という発想とは真逆ですね。
「僕はそういう場合、おそらく天狗になるタイプだと思うんですよ。いろんな権限を与えられてしまったら、すごくイヤな奴になっちゃう。だから、必要以上に売れないのがいいと思っちゃうんだね(笑)。だって僕は音楽がやりたくてミュージシャンになったんだから、それ以外は何も要らない。僕はよく自分のことを〈20坪のスター〉って言うんだ(笑)。ステージ上ではワー!ってすごい歓声をもらって、でも終わって会場を出ると周りにだーれもいなくなる(笑)。それってとっても健全ですよね。だって音楽やってないときは〈タダの人〉がいいもん。ギター弾いて歌ってる時だけ、歓声が欲しい。ステージで〈アレ誰?〉って言われるのはイヤだけど(笑)」
――僕のなかで、スタレビは出し惜しみをしないバンドってイメージがあるんです。やるとなったら100曲だって演奏しちゃう。ここらへんで止めといたほうがいいかな、みたいな計算は不要、というような。
「それは怖さの表れでもある。デビュー当時言われたのは、ライヴというのは腹八分目で帰すんだ、そうすることでまた次観たくなるんだって。“夢伝説”がCMで使われて、その直後のライヴが初めてソールドアウトしたんだけど、すごい盛り上がって、アンコールが止まなくて。で、僕らは〈みんな聴きたがってるんだからやろうぜ〉って勝手にステージに出て行っちゃって、スタッフからものすごく怒られた。まさに腹八分目を越えてたんでしょうね。でもいま100%を見せないでどうする? この程度だと思われてしまったら2度と観る気もなくなるでしょ。出し切ってそれでダメなら僕らも諦める。音楽ってしょせん好き嫌いの世界なんだから。でも出し惜しみしたことで伝えきれなかったとしたら、こんな悔しいことはない。だから僕らはいまでも、ライヴやるときはその時点で考えられることは全部やっている」
――〈20坪〉のスペースだけど、もてなしはすごく豪華だと。
「よくサーヴィス精神旺盛なバンドって言われるけど、僕としては、そんなにサーヴィスしているつもりはない。普通にやりたいことをやっているだけで、ライヴではお客さんが程良いところで気持ち良く帰ってくれることを願ってる。やりたがりの僕らがいて、やりすぎないようにしてくれているスタッフがいる――スタレビはこのバランスが上手く働いていると思うんです。それと、コンサートに来るお客さんって、初めてだったり、曲を知らないと居心地悪さを感じるじゃないですか。そうならないようにMCがあるんです。初めて来た人もちゃんとわかるようなライヴをやってあげたい。そんななかで、何度か来てくれてる人たちがいいライヴの雰囲気を作ってくれて。ありがたいですよ。ライヴって僕らが勝手に決めた日に、場所にわざわざみんな時間を空けて来てくれてるんだもん。だから、来てくれた全員が同じように楽しんでもらえるように考えるのはあたりまえですよね。お店でCDを買う以上の労力を使って来てくれているんだから、僕らも簡単には帰したくない。その思いは90年代にたくさんライヴをやるようになってからさらに強くなったかな」