INTERVIEW(2)――王道以外の何物でもない
王道以外の何物でもない
――それにしてもファンのほとんどが、スタレビは大変音楽性が高いバンドだという共通認識を持っているのがすごいな~と。
「それは僕らがいつも言ってるからだよ(笑)。何たってモットーは〈高い音楽性と低い腰〉(笑)。そういうバンドをめざしているって意味で言ってるんだけどね。それとね、僕らぐらい自分たちの音楽をくどくど説明してるバンドっていないと思うんだ。本気で僕は説明したいんですよ(笑)。〈ここのフレーズは、実は○○の曲の引用なんだよ!〉とか(笑)。〈大好きなバンドを真似てこうやったんだ!〉とか、僕はちゃんと説明したい。新作『B.O.N.D.』に“Welcome To The Jungle”って曲があるんだけど、ガンズ・アンド・ローゼズの代表曲と同じタイトルだよね。メンバーからも〈いいの?〉って言われたけど、〈俺、カッコイイと思って持ってきたんだからいいじゃないか。それもちゃんと言いたいし〉って。まあ、ガンズとウチの音楽性がカブってたらやってないけど、こういうボンド(繋がり)もありじゃないの?って説明しましたよ。お客さんもまたそっちも聴いてみたくなるかもしれないし。それと、僕がいろんなラジオでスタレビとまったく無縁のマニアックな音楽を紹介したりしているから、彼らは〈STARDUST REVUEには幅広い下地があるに違いない〉と思い込んでいるところもあるんじゃないですかね、きっと」
――ふと思ったんですが、要さんは、STARDUST REVUEは〈王道の音楽〉を作っているって意識はありますか?
「ある(きっぱり)。王道以外の何物でもない。王道っていうのは、どこにでもあるものって意味ですよ。つまり〈ミドル・オブ・ザ・ロード〉。いわゆるスタンダード、そこなんですよ。スタレビの音楽は、決して時代を引っ張っていくようなエネルギーを持ったものじゃない。いわゆる中庸なバンド。それを言い換えれば〈王道〉でしょう。どんな人にも聴いてほしい。だから難解な音楽は僕のなかから出てこない」
――しかしいまの音楽シーンほど、何が王道なのか、中庸なのかが見えにくい状況はないですよね。
「そうだね」
――そんな時代に自分たちの存在価値がそこにあると明確に語れるというのは、どういう心持ちでいらっしゃるのかな?と。
「簡単に言うと、80年代の松田聖子。要するに、素晴らしい楽曲と素晴らしい演奏と素晴らしい歌い手、この連係が音楽を知ってる人の耳も知らない人の耳も惹きつけたと思うんですよ。確かにアイドル全盛の時代に音楽性まで突き詰めた新しさと聖子ちゃんのカリスマ性もあったかもしれないけど、時代がどうあれ、これが音楽の根本であり、僕がめざしているところなんです。『スーパー・ジェネレイション』における服部良一さんの楽曲、キャラメル・ママの演奏、雪村いずみさんの歌、これも同様のこと。時代的にはこのアルバムは多少マニアックだったかもしれない。ただ同じ要素で構成されていることは間違いない。僕はね、常にお客さんに対して正直でありたいと思っているんですよ。いま思い出した話があるんだけど、ある大物シンガーがデビュー当時に盆踊りの会場に呼ばれて、やぐらの上で歌ったらしいんですよ。そこで彼は〈今日は僕のために集まってくれてありがとう〉とおっしゃったらしい。ミュージシャンにとって大事な強さですよね。でも僕はそれができない。僕だったらきっと、地元のアマチュア・バンドのふりして舞台に立つと思う。いつもその場に馴染もうとするというか」
――あ~、常に冷静な目で状況判断をし、空気を読んでいると。
「僕らはデビューしてすぐ、81年11月にエリック・クラプトンの来日公演の前座をやらせてもらったんです。その頃デビューしたバンドのなかで、なかなかおもしろいバンドだってことで抜擢されたんです。言っておきますけど、僕がギターを始めたきっかけのクラプトンですよ。まあ、あの当時はドラッグの問題などもあって、正直期待通りのクラプトンじゃなかったけど。全部で8公演あったのかな、ステージに出て行って、いきなり〈こんばんは、エリック・クラプトンです〉って(笑)。でもブーイングもない。はなっから聴く気がないからね。前座に長く時間を費やされたくない。だから、さあ聴いてみようってスタンスになるはずはないと僕らも考えるわけですよ。だけど〈なんだ、こいつら〉ってちょっとでも聴く気になってくれた人がいれば、それだけでがんばって演奏できるんです。まあ偉そうな言い方をすれば、僕らが最初にお客さんをふるいにかけた感じかな(笑)」