インタビュー

宮田大

全身から流れ出す音楽の奔流。小澤&宮田の熱演を追う

チェロのコンクールとして世界最高峰であるロストロポーヴィチ国際チェロ・コンクール(開催地はパリ)で、日本人として初めて優勝した宮田大。世界と日本でその活躍が始まっている。今回は小澤征爾の指揮で水戸室内管弦楽団と共演したライヴ映像(2012年1月19日の定期演奏会)がブルーレイ・ディスク化されることになった。

「リハーサルの時から、小澤さんの気迫が伝わってくる演奏会でした。 自分の体調はさておき、とにかく音楽をしたい、指揮をしたいという気持ちが小澤さんの全身から溢れてくる。リハーサル中には椅子に座ったりなさっていましたが、音楽のエネルギーだけは衰えない。その中で、 一緒に演奏させて頂くのは、ほんとうに希有な経験だったと思います」

と宮田は語る。彼がソロを演奏したのはハイドンのチェロ協奏曲。

「リハーサルの時から『もっと自分のやりたい音楽をどんどん出して』 と言われていました。小澤さんから放出されるエネルギーも半端ないぐらい大量でしたが、こちらにもそれと同じくらいのエネルギーを求めてくる。それで次第に自分の音楽的な密度も高まってくる。そんな指揮者はおそらく小澤さん以外にはいないと思います」

ソロを演奏しただけでなく、後半には水戸室内管のメンバーとして、 オーケストラのチェロ・パートに加わった。

「モーツァルトの『ハフナー』でも、例えば、一番冒頭の部分の弓の返し方まで、みんなで様々に試行錯誤する。小澤さんが求めているソノリティのレベルが高く、それに世界的な名手の集まりである水戸室内管の弦楽器のメンバーが真剣に取り組んで行くんです。こうした挑戦というのは、このオーケストラでしか出来ないものでしょう。小澤さんとオケの信頼関係、そしていまだに切磋琢磨しあっている姿勢には驚きます。僕もソロ演奏以上に、頑張って付いて行っていました」

映像の中には、様々な小澤と宮田の姿、そして水戸室内管のメンバーの表情が映っている。演奏後の達成感溢れる笑顔も素敵だ。実は、この演奏会の翌日から小澤は体調不良を訴え、以後キャンセルしたので、この演奏会の記録は非常に貴重である。さらに、先日亡くなった音楽評論家・吉田秀和と小澤による対談も特典映像として収録された。日本の音楽教育、音楽界全体にわたる提言を含んだ内容は、じっくり味わって欲しいものだ。

LIVE INFORMATION
『宮田大チェロ・リサイタル 』

11/28(水)19:00開演
会場: 名古屋・電気文化会館 - ザ・コンサートホール
http://www.daimiyata.com

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年08月31日 16:43

ソース: intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)

取材・文 片桐卓也