INTERVIEW(2)——〈追憶〉がいまの自分を作っているすべて
〈追憶〉がいまの自分と作っているすべて
長谷川正
――詞はラヴソングのようにも読み取れますが、やはり竜太朗さんのパーソナリティーが刻まれているといいますか。今回は“まひるの月”のRebuild版も収録されてますが、“シオン”の〈空を見上げたくないのは眩しすぎるから〉と“まひるの月”の〈7月の高すぎる青い空は嫌いなんだ〉って言ってるところって、ああ、同じ人が書いてるんだなって。
「まあ〈三つ子の魂百まで〉的な感じじゃないですかね(笑)。自分ではそこの共通点に気付かなかったんですけど、変わらないところは変わらないんでしょうね」
――以前、〈詞は曲に呼ばれることが多い〉とおっしゃってましたが、“シオン”の詞の世界観は、サウンドが固まってから見えてきました? それとも、漠然とでも最初からありました?
「漠然と最初から、のほうじゃないですかね。最初に作ったときは、言葉より先に、頭のなかに映像がありましたね」
――それは例えば、紫苑の花が揺れている映像ですとか?
「紫苑っていう花自体は、歌詞を全部書いたあとになんとなくはじめから見えてた画に合う花を探して、そのイメージに近かった花のなかの一つだったんですよね。その、モチーフになりそうな花の画は曲を作ったときからずっとあって。それがなんの象徴なのかっていうのは自分でもはっきりわかってないし、探ってもなかったんですけど紫苑を見つけたときに〈これだ〉と思い。花言葉も歌詞そのものだったし」
――花言葉は〈追憶〉ですね。
「その〈追憶〉っていうのは結構当たってると思うんですよね。強く思ったり願ったりする気持ちをすごく大切にしたい、とか……でも未練だとか情念的なものでもなくて、単純に〈追憶〉っていうのがいちばんハマるんですよね。追憶があるからいまを受け止められるし、この先も進めるのかなぁって。一応ラヴソングの形式を取ってるんだけど、追憶がいまの自分を作ってるすべてというか。そういうふうに思える曲になったかなって」
――過去に対して肯定的、ということ?
「あっ、そうですね。肯定的ですね」
佐藤ケンケン
――その追憶も、センティメンタルな部分はあるんですけども、フラットに過去を見つめているような印象がありますね。
「そうですね。感情はそんなにないんですよね。一瞬、出るんですけど……音楽的にもそういうアレンジになってるし。でも曲全体としてはあんまり感情論じゃないというか。それは自分の性質とも似てるんですけど、追憶を傍観してるみたいなところが、曲のもともとの性質のような気がします。15周年の2012年も後半になってきましたけど、やっぱり自分たちにとってはいまが軸だから、これまでやってきたことを改めて見直すことって、どっちかっていうと追憶なんですよね。15年前の曲のRebuildとかもやってみて、いままで自分たちが過ごしてきた日々っていうのは、いまの自分たちを成り立たせてる大事な日々だったんだなって思うことがすごく多かったから……このタイミングで、こういうテーマのシングルを出せたっていうのも、自分的には勝手にまとまったかなって思ってるんですけどね」
――Rebuild版を作るにしても、やり方としては壊すっていう方法もあると思うんですね。ただPlastic Treeの場合は、徹頭徹尾、曲のもともと持っている性質を活かそうという方向性で。そこも肯定に繋がっているような気がしますね。
「前だったら壊したかもしれないですけど、いまは曲がいっぱいあるんで、壊しちゃうと他の曲になっちゃうかも、っていうのもあって(笑)。あと、Rebuildしてきたのはデビュー・アルバムの曲だから、その一つ一つに意味があったと思うんですよね。だから、まんまをやんなきゃいけない部分に関してはまんまをやるっていう」
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