INTERVIEW(3)――お客さんに対してすごくダイレクトになった
お客さんに対してすごくダイレクトになった
――NRBQとの比較をついでに言えば、スタレビの音楽も幅広いジャンルのエッセンスを採り入れて生み出されていますよね。だからライヴのエンターテイメント性が非常に高くなる。
「いや、NRBQが持っているあのアヴァンギャルド性は到底真似できるものじゃないでしょ。あれは然るべきテクニックによって表現できるもの。まさに〈崩し〉のテクニック。それを僕らが持てていないのが悔しいんだよね。ムーンライダーズもそうだけど、彼らにはちゃんと信念がある。でも僕らがめざしているのは、ひたすらポップな音楽を作ること。だからスタレビは難解な部分を嫌う傾向にあるけど、何にこだわりを持つかと言えば、コーラスかな。演奏が上手くなれないのならコーラスを徹底的にやろうと。とことんコーラスを極めて、スタレビならではの形を作り上げようとしてきたところがありますね」
――なるほど。
「昔、ジェリー・ガルシアがインタヴューで答えていたんだけど、楽曲はライヴで3年やってようやく完成するんだって。僕もそれを信条としているところがある。やっぱりレコーディングでどんなに歌ったとしても、それは何回も歌ったり、いいところのツギハギの状態、一発でパーン!と上手くは歌えないわけですよ。でもね、3年ライヴをやるとホントに歌が良くなるんです。だったらそういうプロセスを経てからレコーディングしろって言われそうだけど、残念ながらスタレビが考えるレコーディング・システムのなかではなかなか難しい。作ったら、はい、レコーディングって流れになる。いま現在ではその曲を持ってツアーに出て、どんどん上手くなるという段階を踏むしかない」
――それを踏まえてお訊きしたいのですが、この10年で作られた曲って、ライヴの場においてどのように成長しているのでしょうか? 80年代、90年代の楽曲の場合と比べて、成長の速度や進歩の度合いなどに何か違いを感じることはありますか?
「お客さんに対して、ものすごくダイレクトになった気がするんだよね。ちゃんと伝わっているという感覚を持てるのは、良く出来た昔の楽曲よりも、最近の曲のほうが多い気がする。メールや手紙を読むと、お客さんがふと涙を流してしまったりするのは、最近の曲のほうが多いみたい」
――知らず知らずのうちになんか泣けてきちゃった、って感じなんでしょうかね。
「“木蘭の涙”のように涙なくして聴けない曲が片方にあって、泣かせる詞であろうとなかろうと、それぞれの思い出と結び付いてふっと涙が出てしまうような曲が最近は多くあると。そういう声をよくメールでもらいますね」
――まさにいま訊いたお話と同じような体験を、今回のニュー・アルバム『B.O.N.D.』を聴いて僕もしたんですよね。
「お~、嬉しいですね、それは!」