インタビュー

LONG REVIEWーーUNISON SQUARE GARDEN “リニアブルーを聴きながら”



ますますおもしろくなっていく予感



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まずはクレヴァーに、それでいて内には情熱をたぎらせつつ、何よりも音楽そのものへの強い思いを胸に。彼らはそうやって音を鳴らすことで、他の誰とも違う道を進まんとするバンドだ。7月の3曲入りシングル"流星のスコール"に続けて、このたび4曲を収録したニュー・シングル"リニアブルーを聴きながら"がリリースされた。短期間に7曲を(しかもシングルだけで)発表するクリエイティヴィティーの加速ぶりに恐れ入るが、その楽曲の充実度も並々ではない。

まず"リニアブルーを聴きながら"は、メロディアスなユニゾン節が全開のキラー・チューン。煌めく旋律とクリアでブライトなヴォーカルが融合し、胸躍るケミストリーが生まれている。サウンドに推進力を持たせるアレンジも特長で、リズムの緩急とシンコペートでどんどん昂揚感を高めていくコンビネーションがバンドの新しい一面を見せてくれる。楽曲の展開に沿って(平たく言うと、歌の1番と2番で)編曲を様変わりさせる、彼らお得意の手法もそこにうまく作用しているようだ。

そして"さわれない歌"はオルガンやアコギ、シンセ・ストリングスを入れたミディアム。柔らかなテイストの曲だが、その歌詞の変化に驚いた。これまでの彼らの詞は、言語感覚や響きに優れる一方で抽象的な言葉も多く、〈誰が聴いてもわかりやすいもの〉ではなかったが、ここでは歌をテーマに、聴き手を励まし力づけるような言葉が出てきている。それも〈いろいろあるけど、みんなで盛り上がろうぜ!〉というものではなく、冷静に歌そのもののあり方(表題のとおり、誰も触れない)について思いを巡らし、そこにさまざまな解釈の余地を残すというバランス感覚に基づいたものだ。

また、ドラムンベース調のビートに乗せて独特のコードワークとシーケンスが踊る"三日月の夜の真ん中"はロマンティックなラヴソングとも取れる詞だが、甘さよりスマートさが先に立つのが彼ららしい。

そして最後の"ラブソングは突然に~What is the name of that mystery?~"では、珍しくハード・ロッキンなリフとゴツゴツしたビートで突っ走る。スネアのダビーな音響処理やノイジーなカットアップも駆使した賑やかなアレンジで、ナンセンスへと振り切れた詞も前述した流れのなかで聴くと実に痛快だ。

以上4曲、サウンドはいずれも志向が異なるが、どの曲も大なり小なり音楽について歌われている。これは楽曲を通して彼らが伝えたいことの焦点が絞られてきたとも取れるし、メッセージを発信することへの思い切りや覚悟もあるのかもしれない。そして彼らが音楽に懸ける信念と賢明さがあれば、ますますユニークでおもしろいバンドになっていく。そんな予感と期待を持たせてくれる意欲作だ。


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掲載: 2012年09月19日 18:00

更新: 2012年09月19日 18:00

文/鬼頭隆生