インタビュー

INTERVIEW(2)——時代の流れに乗っかってない



時代の流れに乗っかってない



MERRY



――でも、またそれもおもしろいですよね。ガラくんが作曲をするわけではないにも関わらず、そういった要素がMERRYの楽曲には息付いている。まさにこの5人で作り上げているということなんでしょうね。

結生「たとえば、“黄昏レストラン”という曲がありますけど、インストゥルメンタルとして聴くと全然レトロじゃないし、昭和歌謡といった雰囲気でもないんですよ。むしろ、俺的にはhideさんとかの要素が出てる。そこにガラが歌と歌詞を載せることで、ああいった感じの曲になる。最初の頃は、何か変なアンバランス加減でMERRYというものになっていたのかなと。そこから10年間、いろんなやり方で曲も作ってきましたけど、自分たちのやれることをいつも探しているバンドなんですよ。そのぶん、MERRYとはこれだと断言するのが難しくなってはきますけど(笑)、常に進化したり、変化したりするのが、MERRYのやり方なのかもしれませんね」

――ええ。今回のベスト盤で改めて36曲を聴いて思うのは、初期の曲でも最近の曲でも、どちらもMERRYなんだよなと思えるものはありますよね。

結生「そうなんですよね。自分たちでどれだけ変わったと思っていても、演奏している人間、歌っている人間はいっしょだし、それをライヴのセットリストのなかに組み込んでしまえば、全然、違和感もないですからね。もちろん、当時の音や声とは変わってますけど、それはそれで楽しんでもらえたら、MERRY的には大成功ですね(笑)」

健一「改めて聴いても、単純にカッコ良い曲がすごく多いなって思うんですよ。選曲するときも候補がいっぱい出てたんですけど、どれが入っても〈ベスト〉と言えるものになるというか。そんなふうに思いましたね」

ネロ「今年の4月30日のZepp Tokyoのライヴの第2部は、ファンからのリクエスト形式でセットリストを決めたんですけど、あれがこのベスト盤にも反映されてるんですね。その意味では、みんなで作り上げた内容にはなってるかなと。まぁ、でも自分のことで言うと、僕はそのときそのときの旬なものが、ドラムにしろ、曲にしろ表れるんで、いろいろ吸収してきてのいまなんだなと改めて思いましたね」

――その時々の自分が見えてくる。

ネロ「そう、可愛いっすね(笑)。バンドマン全般に言えることかもしれないけど、少年心が見えてくるというか。さっき自分のバイブルとして、D'ERLANGERやら何やら挙げましたけど、その頃の気持ちと大して変わってないものなのかもしれないですね」

テツ「僕が改めて自分らの強いところだなと思ったのが、どの曲を聴いても〈これ、古っ〉って感じないことなんですよね。いまでも“バイオレットハレンチ”とかをサラッとライヴでやりますし。だから、この〈MERRY VERY BEST〉も、〈懐かしんでください〉というより、〈これでMERRYを知ってください〉って名刺代わりに出せるアルバムなんですよ」

――確かにある意味、〈懐かしい〉という雰囲気はないですよね。もちろん、MERRYの楽曲が醸し出す郷愁感などはあるわけですが。

テツ「そうですね。バンドを始めた頃からこういうレトロな感じだったので。その当時に聴いてくれていた人たちの記憶がフラッシュバックすることはあると思うんですけど、初めてMERRYを聴く人が〈時代を感じる音だなぁ〉というのはないバンドなのかなって」

ガラ「バンドを組むにあたって、哀愁とかレトロとか、エログロとか、ヘヴィーネスとか、いくつかテーマを挙げてたんですね。結果論なんですけど、通して聴いてみると、この10年、自分がやりたかったことをその通りにちゃんとやってこれたんだなって。ただ、テツさんはあまり古さを感じないって言ってましたけど、俺はこれだけいろんな時代のアルバムの曲が集まると、声がめっちゃ変わったなぁという……初めて留守電で自分の声を聴いたときのような違和感が(笑)。歌詞のことで言うと、俺はちゃんと景色を出していきたいんで、わりと固有名詞とか、モノを歌詞にそのまま載せることが多いんですよね。たとえば、〈F503i〉って携帯電話が出てくるんですけど(“東京テレホン”)、いまはもうスマホが主流じゃないですか。他にMD、LPって言葉とかも入ってるけど(“哀しみブルートレイン”)、みんな知ってるのかなぁって(笑)。電化製品系は、すごく時代の流れが速いなというのを知りましたね(笑)」

ネロ「レコーディングはそのときの記録ですからね。僕はそれがフラッシュバックするものとして、すごく好きなんですよ。昔の昭和の楽曲にも入りまくってますし、そのテイストがMERRYにもあるんだなと思います」

ガラ「時代の流れには、変に乗っかってない気がするんですよね。逆らってるかというとそうでもないんですけど、巷でこれが流行っているからこのラップ感を入れてみようぜとか、まったくないですからね」

結生「それをもし過去にやっていたとしたら、それこそいま聴くと、かなり古いものになっちゃってたと思います(笑)。それをやってこなかったからこそ、昔の楽曲が古くならないんだと思うんですよ」

ガラ「うん。最近はいろんなフェスとかにも出るようになって、確実にいままでと違う環境での活動もできているんですよね。そういう意味では、〈集大成のベスト盤です〉というより、これがファースト・アルバムみたいなイメージもあるんですよ。そうそう、何かね、タイトルが古くさいんですよ。日本語とカタカナという……俺、すごく日本というものにこだわってきたんですけど、ホントに日本語の言葉遊びで歌詞とかタイトルも決めてて」


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掲載: 2012年09月26日 18:01

更新: 2012年09月26日 18:01

インタヴュー・文/土屋京輔