インタビュー

クリープハイプ “おやすみ泣き声、さよなら歌姫”



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[ interview ]

クリープハイプに対する注目度は昨年から急激に高まっていたが、今年の4月にメジャー・デビュー作『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』をリリースして以降、その状況はますます勢いを増している。6月に赤坂BLITZでのワンマンをソールド・アウトで終えると、アルバムは〈CDショップ大賞〉にノミネートされるなど、早くも今年のギター・ロック・シーンの顔と言ってしまっていいほどの活躍ぶりだ。そんな追い風のなかで発表される作品が、初のシングル“おやすみ泣き声、さよなら歌姫”。〈純正クリープハイプ〉とも言うべきこの楽曲で、彼らはさらなる階段を駆け上がろうとしている。難産だったという今回のシングルとバンドの現状について、尾崎世界観(ヴォーカル/ギター)にじっくりと語ってもらった。



〈負けてる〉ところから表現するのがしっくりくる



――4月のメジャー・デビュー以降、バンドを取り巻く状況がますます大きくなっていると思うのですが、ご自身では現在の状況をどう感じていらっしゃいますか? ライヴのMCでネタっぽく〈人気バンドです〉っていうことを言ったりしていますし、デビューまでのキャリアが長いバンドだから現状を結構冷静に見ていらっしゃるのかな?という印象なのですが。

「いまって〈このバンドはすぐ終わるのか、ずっと続くのか、どうなんだろう?〉って見極められてるところだと思うんですけど、自分も同じように〈どうなんだろう?〉ってこのバンドのことを見てる感じがするんですよね。もちろん、当事者なので当事者としての視点もあるんですけど、どこか冷めた視点を持ってたほうが、簡単に転ばないんじゃないかっていう気持ちもあります。MCでネタとして言うのも、ちゃんと自分はそういうことも考えてるってアピールしたいってことでもあるし、ここまできたからには絶対失敗したくないし、上に上がっていきたい気持ちがすごくあるんです」

――今回のシングルには6月に赤坂BLITZで行われたワンマンからのライヴ・テイクも収録されていますが、あの日の印象はいかがでしたか? もちろん、ある種の達成感はあったと思うんですけど、それよりも〈ここからが始まり〉というような意識のほうが強かったですか?

「達成感はもちろんあったんですけど、ずっと想像していた光景だったので、〈やっぱりそうだよな、これだよな〉っていう気持ちもありました。そこもちょっと冷めた感じで、〈これがなんで5年前にできなかったんだろう〉っていう気持ちもありましたね。あたりまえのように頭のなかで描いていた光景だったので」

――バンドを始めてすぐの頃からずっと思い描いていたんですか?

「そうですね。バンドを始めたときから大勢の前で、デカい会場でライヴをやるっていうイメージはあったんですけど、ただゴール地点だけは見えてて、行き方がわからない状態だったんですよね。いまは実際そこを辿ってきたし、道もゴール地点もちゃんと見えているので、すごく気持ちがいいというか」

――これまでは漠然と見えていたものが、いまは〈これをこうしてこうすればここに着く〉っていう具体的な手段がわかるようになったと。

「ただ、そこに行ったらまたその上が見えてくるんですよね。フェスとかでも、小っちゃいステージが満員になって、〈いいライヴしたな〉って思っても、もっと後の時間帯にデカいステージでやってるバンドを観ると、〈やっぱりここでやりたい〉っていうイメージができちゃうんですよね。ここから先はすごく難しくなると思うんですけど、やりがいはあるし、さらに上に行ったところを見せていきたいですね」

――尾崎さんはよくインタヴューで〈あきらめから始まっている〉とか〈基本的に負けてる感覚がある〉っていうことをおっしゃってますけど、いまの状況は客観的に見て〈勝ってる〉って言える状況だと思うんですね。そのことによって、表現に変化が出てきたりっていうことはあるのでしょうか?

「いまは前より自信はあると思うんですけど、下から上に向かっていくっていう考え方はなかなか変わらないんだなって最近思うんですよね。〈負けてる〉っていうところから表現していくのがすごくしっくりくるというか。でも、それでいいとは思ってなくて、やっぱり〈そこから勝つ〉っていう感覚なんですね。自分にとって居心地が良くて、いちばん力が発揮できるのがそういう視点なんだけど、でもそれでいいとは思っていないっていう」

――いいと思ってそこにいるのと、良くないと思いながら結果的にそこにいるのは、大きく意味合いが違いますもんね。

「そこから始めたほうがもっと遠くまで行けるっていう感覚ですかね。助走をつけてるみたいな感じで、後ろに下がったほうが遠くまで飛べるっていう」


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掲載: 2012年10月03日 18:01

更新: 2012年10月03日 18:01

インタヴュー・文/金子厚武