インタビュー

INTERVIEW(3)——覗かれる前に、さらけ出したほうが気持ち良い



覗かれる前に、さらけ出したほうが気持ち良い



――2曲目の“転校生”は子供からの視点っていうのがユニークですよね。

「わりとすぐそういう方向性が出てきたんですけど、結局はどっちでもない気がするんですよね。子供は大人のことを羨んで〈大人になれば〉って思うし、大人はしんどいから〈子供のままでいれたら〉って思うし、またこれもすれ違いだと思うんですけど」

――“転校生”っていうタイトルにしても、転校してきた側の疎外感を思わせもするし、転校していく側の寂しさを思わせもする。これも〈どっちでもない〉感じがします。ちなみに、尾崎さんとしてはどっちのイメージでした?

「どっちかって言うと、行く側のイメージでしたけど、でも言ってもらったように、どっちでもいいんですよね。いい加減に聞こえるかもしれないですけど、ホントにどっちでもよくて。あの……髪の毛を切ってるときに、途中で〈これいいな〉って感じになって、結果的に〈切りすぎた〉っていうときがあると思うんですけど、そういう感じで、完成する前にピークがあるんだと思います。〈これだ〉っていう感覚が、わりと作ってる最中に訪れるので、結果的にはどっちでも取れるような感じになるのかなって、いま思いました」

――なるほど。ちなみに、僕は切り終わるまではいいんですけど、最後セットしたときに〈あれ?〉って思うことが多いかもしれないです(笑)。

「あと次の日に、自分だと同じセットにならないっていうのもありますよね。僕の場合は髪がベチャってなってるから、セットしてもすぐに戻っちゃうんですけど(笑)」

――つまりは、どんな書き方をしても、最終的にはクリープハイプっぽい曲になるっていうことですかね。

「あ、いま上手くいきましたね(笑)。結局こういう表現になるっていう、いまのすごくいい流れでしたね」

――かなり強引でしたけどね(笑)。ただ、そのどっちでもない感じ、白と黒に割り切れない感じっていうのはいまの時代感でもあると思っていて、3曲目の“明日はどっちだ”にもそういう感覚はあると思うんです。クリープハイプはある種の世代感を象徴する〈代弁者〉みたいな言われ方をすることも多いかと思うんですけど、そういうことって意識されますか?

「んー、でもあんまり言われないですよ。僕もそんなに意識してないし、〈これを言ってやるぞ〉みたいな気持ちもないですし。そうやって思ってもらえるのはすごく光栄ですけどね……なんででしょう? 〈尾崎〉だからですか?」

――いや、〈豊〉とはちょっと違うと思うんですけど(笑)、でも尾崎さんのリアルで生々しい歌詞っていうのはすごくいまを象徴してるとは思います。ネットの普及以降、いままで隠されてたものが表出してきて、それが若い人の歌詞にも表れてきてるっていう。

「ああ、それはあるかもしれないですね。覗かれる前に、さらけ出したほうが気持ち良いというか。ただ、生々しいところっていうのは無意識で書いてて、やっぱりそういう歌詞が好きだし、そういうミュージシャンが好きだし、そこに感動するっていうのがありますね。〈どういう生活をしてたら、こういう歌詞が出てくるんだろう〉って思ってもらいたいというか、僕は結構好きなミュージシャンのことをそういうふうに想像したりするんです。書いた人の中身が透けて見えてくるような曲を作りたいですね」


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掲載: 2012年10月03日 18:01

更新: 2012年10月03日 18:01

インタヴュー・文/金子厚武