インタビュー

LONG REVIEW——lynch. “LIGHTNING”



ストレートな新境地



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まさに、わが道を行くバンドだ。メジャー進出後、2枚のアルバムでみずからのアイデンティティーを力強く謳い上げたlynch.。ラウドなバンド・サウンド、妖艶で耽美的なメロディーという2本の柱を中心に、メタルやポスト・ハードコア、スクリーモなどさまざまなジャンルと繋がる独自の音楽性を打ち立ててきた。歌とシャウトとスクリーム、そして日本語詞と英語詞を使い分ける表現のなかには、激しさと狂おしさが入り混じったlynch.ならではの世界が広がっている。

6月にリリースされたアルバム『INFERIORITY COMPLEX』からわずか4か月という短いスパンでリリースされたシングル“LIGHTNING”。高速BPMの疾走感に的を絞った作品をリリースし、小規模のライヴハウスを回るツアーを経てバンドとしての原点に立ち返った彼らが放つのは、引き続き攻撃的な2曲だ。それでも曲調はかなりキャッチー。叩き付けるようなビートと研ぎ澄まされたフレーズが、メロディアスな歌を支えている。

歌詞の持つメッセージもポジティヴだ。〈そう いつかは死にゆくのに時間はまるで足りない〉〈そう 激しく求めるほどに未来は輝くから〉と、〈いま〉の瞬間を燃やすことを歌う“LIGHTNING”。8ビートからツイン・リードのギター・ソロを経て〈さぁ 窓をあけて 世界は美しい〉と呟きのような言葉で完結する “THE MORNING GLOW”。lynch.の楽曲はドラマティックなストーリーを垣間見せるものも多いが、ここまでストレートなものは、一つの新境地と言えるかもしれない。

10月末からはふたたびツアー〈「THE FATAL EXPERIENCE #2」― SEIZE THE MOMENT ―〉が始まる。立ち止まることなく走り続けるバンドだからこその勢いを封じ込めたシングルが、本作だ。


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掲載: 2012年10月24日 18:01

更新: 2012年10月24日 18:01

文/柴 那典