OMSB 『Mr. "All Bad" Jordan』
[ interview ]
昨年を代表するアップカマーとして各方面から熱い視線を注がれているSIMI LAB。DCPRGをはじめとする数々のコラボレーションやさまざまな事件もあって、今年に入ってからもその注目度はいよいよ高まるばかりだ。そんななか、中心人物のひとりでもあるOMSBから待望のファースト・ソロ・アルバム『Mr. "All Bad" Jordan』が届けられた。〈DCPRG YAON 2012〉への出演やラージ・プロフェッサーとの共演など多忙なスケジュールの合間を縫って、ここでは記念すべきソロ・アルバムについて、ますます勢いを増しているグループの今後について、じっくりと語ってもらった。
ずっと出したいと思ってた
――この数か月でいろんなことがあったみたいで。
「そうですね(笑)」
――まあ、今回はアルバムの話なんですが。まず、この時期にソロ・アルバムが出ることになったのは?
「単純にここらで俺が出してないと、このあとタイミングが来ないんじゃないかというのは思ってました」
――SIMI LABの『Page 1: ANATOMY OF INSANE』の時の取材でもそう仰ってましたね。
「そう言いながら、何だかんだで現在に至った感じです。もっと言っちゃえば……QNの『THE SHELL』が出た頃から出したいと思ってましたね(笑)」
――一昨年のことですよね。『THE SHELL』の後ぐらいには配信で『The Report』ってEPも作られてました。
「その時点ではファンクのネタが多めで、トラックもだいたい決めてもう(リリックを)書いちゃおうってとこまでは行ってたんですけど。暮れにカニエの『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』が出たじゃないですか。まあ別物なんですけど……あれを聴いたら、これじゃダメだなと思って全部ボツにしたんです」
――SIMI LABのアルバムより前ってことだと、昨年の春にはWAH NAH MICHEAL名義での『Japanese Bukkake Tracks Vol.2』もありました(笑)。
「Bukkake、ありましたね。Vol.1はその時使ってたPCを人にあげちゃって、もう手元にデータがないんですよ」
――その時点からソロ・アルバムの準備のつもりだったんですか?
「そうですね。あそこに入れてた“Dark Hero”とかは正規の作品にも入れたいなって思ってた時期もありました。いまとなっては旬じゃないんですけど」
――じゃあ、けっこう前から段取りだけはあったわけですね。
「そうです。そうこうしてるうちにSIMI LABのアルバム制作が進んできたこともあって、中断して」
――『Page 1: ANATOMY OF INSANE』もOMSBさんのトラックが多かったですもんね。
「アルバムが出た後、去年の暮れぐらいにビートを作った時に、〈これは俺のソロだな〉と思うものが出来て。結局その曲は今回のアルバムには入ってないんですけど、スタートはそこからですね」
――そういうビートの作り分けって、ふだんからやってるものなんですか?
「作りはじめは適当ですけど、作り込んでだんだん形が見えてきた時ぐらいに、これは誰々っぽいなとか、メンバーとか仲いい奴とか」
――今回の『Mr. "All Bad" Jordan』のビートは全部自分でやってるんですよね? 現時点では曲ごとのクレジットがなくて、資料には〈produced by OMSB & WAH NAH MICHEAL〉と書いてあるんですが。
「俺のトラックと、WAH NAH MICHEALのトラックと、俺とWAH NAHの共同プロデュースでやってるのと、3通りありますね」
――それは(笑)。
「まあ自分のなかでの線引きなんで説明はしづらいですけど(笑)」
――前は〈ベース・ミュージック寄りなのがWAH NAH〉っていう説明をされてましたけど、だいたいその感じなんですか。
「そうですね。いや、そうでもないですね」
――どっちですか(笑)。
「ベースというか……チャラいのがWAH NAHの音ですね。わりかしサンプリングの雰囲気が強いのはOMSBで、もっと無機質でシンセが入ればWAH NAHでしょってぐらい。だんだん線引きがなくなってきてはいます」
――SIMI LABでいうと“Uncommon”や“That's What You Think”がそうでしたけど、個人的にはWAH NAHさんのビートが好きですね。今回だと“Rapper Ain't Cool”とか……。
「なんか、いいトラックが出来た時は自分でもWAH NAHなんですよね。今回でいうと“Rapper Ain't Cool”とかはいちばんWAH NAHっぽいと思います」
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