インタビュー

LONG REVIEW――ペトロールズ 『Problems』



勝手に脳内ロード・ムーヴィー



ペトロールズ_J170

旅路でペトロールズを聴いている。出掛けた先でその音がどう響くのか、どんなふうに土地に溶け込み、どんな情景を見せてくれるのか。旅は音楽を味わい深くする。やっぱり、旅には音楽がないと。音のない旅は、なんだか寂しい。

数日前に届いたペトロールズ『Problems』。出掛ける前はあえて聴かず、道中で聴こうと決めた。ウワサの3人組に、ひとり旅のお供になっていただこう、と。

〈お供〉というのは、まさしくその通りで……。ペトロールズの音楽というのは何と言うか、〈音と戯れる〉といった印象で、道中はそんな彼らの音楽と私も〈戯れた〉というか。対話するように奏で合う演奏、重なり合う声、連想ゲームのように意味深に連なる言葉。ときには誰もいない夕暮れの海を散歩して、ときにはシトシトと降る雨を眺めながらバスに乗って、彼らの音を繰り返し聴くうち、そこにある〈音の輪〉に巻き込まれていた。表情は変わるのに、くるくるとループする感じ。色彩は豊かなのに、そのなかにどこか法則がある感じ。まるで万華鏡のようなおもしろさ。

とりわけキュンとしたのは、飛行機の窓から、ぽっかり浮かぶ雲を眺めて聴いた“エイシア”。〈空と海まぜて吸いこんで/体が重力を思い出せない/空に同化していく/不確かでも捧げる〉――抽象的な歌詞の世界に想像を巡らせていると、空にメロウなギターの音色が溶けていく。陽の眩しさに目を細めて、気の遠くなるような美しい音に酔いしれた。

“カザーナ”の歌詞が耳にこだまする。〈巻き込まれてるみたい/巻き込んでしまいたい/もつれ始めたみたい/さあどうしよう?〉――物語が生まれ、映像が浮かぶ。3人を主役に、もう勝手に脳内ロード・ムーヴィー。

今日また、私は違う土地へ発つ。そして音と戯れる。ペトロールズとの旅はまだまだ続くのだ。



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掲載: 2012年11月07日 16:30

更新: 2012年11月07日 16:30

文/岡部徳枝