渋さ知らズ 『渋彩歌謡大全』
[ interview ]
特定のジャンルやカテゴリーに収まりきらないカオス的な音世界を作り出す怒涛の音楽集団、渋さ知らズ。白塗りの前衛舞踏家やダンサーなどを擁して大編成で行われるライヴはいつも素敵なハプニングに満ちていて、観る者をトリコにしてしまう魅力がある。
そんな、いまや世界からも注目される存在となった彼らの新作『渋彩歌謡大全』は、なんと〈歌謡曲〉の名曲をカヴァーした作品だ。もともと渋さの音楽のエッセンスの一部にもなっている歌謡曲にじっくり向き合うということで、そんじょそこらのカヴァー集とは違うものになっているだろうと予測はついてはいたものの、実際にドープな世界が広がるとんでもないアルバムに仕上がっており、ビックリ仰天、有頂天。フィーチャリングのヴォーカリストも、一風変わったスゴイ面々ばかりが揃っている。そんな本作について、渋さを率いる〈ダンドリスト〉の不破大輔に話を訊いた。
地が出ちゃった
――初のカヴァー・アルバムということですが。
「本当はビートルズとかのカヴァーをやろうと思っていたんですけど、全然違うことになってしまいまして。芳垣安洋さんがやっているオルケスタ・リヴレのような60年代の趣味の良いポピュラー・ミュージックの世界をやろうとも考えてたんですが、地が出ちゃって、結局はアングラな感じになっちゃいました(笑)」
――でも、クドさといい、まさに期待通りの仕上がりで。
「お恥ずかしい限りで(笑)」
――それにしても参加者が豪華ですね。このなかで初顔合わせになる方っていたんですか?
「坂本美雨ちゃんがそうです。僕は子供の頃、お母様のライヴをよく観に行ってたので、〈ワ~イ!〉って気持ちでしたね。美雨ちゃんは大駱駝艦とか好きだったらしく、ウチのダンサーのこともよく知っていて、ワークショップにも行ったことがある、なんて話してました。このアルバムはドス黒い面々ばかりが揃っているので、彼女の存在がなかったらいったいどうなっていたんだろうって思いますよ。ハハハ!」
――どす黒い(笑)! 曲順で言うと、遠藤ミチロウさんと三上寛さんに挟まれているという、すごい流れ(笑)。
「とんでもないサンドイッチ状態ですよね(笑)」
――昭和歌謡がズラリと並んでいますが、なかにはYEN TOWN BANDの“Swallowtail Butterfly ~あいのうた~”なんて90年代の曲もあったりする。そういえば、今年の〈フジロック〉ではCharaさんとの共演が話題になりましたね。
「ベースのKenKen君がCharaさんを連れてきていて。まず一回僕らだけでやって、Charaさんがやっている同じキーですよ、と言っておいて……」
――で、アンコールで彼女が登場して“Swallowtail Butterfly ~あいのうた〜”を歌ったという。
「そう。ただその頃、僕は泥酔していてよく憶えてないんですよ(笑)。たぶん楽屋に彼女がいて、〈いっしょに行こうよ!〉とか何か言ってやっちゃったんだと思います」
――彼女はどんな反応でした?
「だから、泥酔していたから憶えてないんですよ(笑)。でもカッコ良かったですね。感動したことだけはちゃんと憶えてる」
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