INTERVIEW(3)――歌謡曲の無国籍感
歌謡曲の無国籍感
――不破さんとしては、このアルバムを作ってみて、新たに歌謡曲の魅力を見つけたりしました?
「再認識できたかな、って感じですかね。言葉とメロディーがちょうどいい塩梅になっていて、よく作られた歌ばかりだなあと。僕ね、“帰ろかな”って世界でもっとも早いルーツ・レゲエの曲だと思うんですけど(笑)。ボブ・マーリーがジャマイカでまだスカをやってる頃に作られた歌ですよ。イントロは(ジョン・)コルトレーンのようだし、サブちゃんの歌声は真っ黒だし(笑)。コード進行にファンクの一発感みたいなのがあったりして、当時もものすごくモダンだったと思いますよ。八大さんが書かれた書籍を読んだら、NYに何か月か滞在した際、ヴィレッジ・ヴァンガードかファイヴ・スポットかにオーネット・コールマンがハウス・バンドで入っていて、彼はずっと観に行ってたんですって。あまりにおもしろいから乱入してピアノを弾いたらしくて。なぜかわからないけど、フリー・ジャズがおもしろかったって書いてましたよ。いい話だなぁと」
――ところで不破さんの歌謡曲観に影響を与えた曲って何になるんでしょう?
「〈トルコ行進曲〉とか〈エリーゼのために〉ですかね。昔、ステレオを買ったときに付いてきたテスト・レコードにそういう曲が入っていて、よく聴いていたんです。で、ああいうメロディーがザ・ピーナッツの曲にリンクしたんですよね。クレージーキャッツがTVでコントのネタで使ってたりしてね。小学生ぐらいになると山本リンダとか森山加代子の曲を歌ったりしてました。〈あなたに抱かれて私は蝶になる~♪〉って歌ってたら、〈そんな歌、歌っちゃいけません!〉って親に叩かれたりしてね。何でなのか気が付くまでにすごく時間がかかりましたが(笑)」
――かつての歌謡曲の魅力には、無国籍感ってものがありましたよね。
「そうなんですよね。戦後は、アメリカだけでなくイタリアやフランスのメロディーもたくさん入ってきたわけで、いろんな国に憧れるようにいろんなタイプのメロディーを使った歌謡曲が作られていましたよね。あと、怪獣映画の音楽ね。伊福部昭の音楽なんて無国籍感のカタマリのようなものですもんね」
――インファント島(モスラが生息していた島)の儀式で使われる音楽とか(笑)。
そうそう(笑)。〈いったいどこにあるんだよ、その島は?〉って。そのへんとかがゴッチャになりながらこのアルバムのような世界が形成されてきたわけです、ハイ」
――なるほど。まさにそういう歴史の結晶のような作品に仕上がっていますね。
なんだな、って思ったな。いろいろ話をしていたら、連想ゲームのようにあちこちから記憶が甦ってきて。そんなに知っているわけじゃないんですけど、たぶん好きなんだな、って自覚しちゃった」
――ほんと、個人的には若いリスナーがどんな反応示すのか、楽しみで楽しみで。
「〈やめてくれ!〉って声も出てきそうですけどね(笑)。〈悔しかったら、聴いてみろ!〉って感じなんですよね」
――ハハハ、いいですね!
「〈これでも喰らえ!〉ってね(笑)」
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