インタビュー

INTERVIEW(2)――〈ロックンロールで闘う〉ということ



〈ロックンロールで闘う〉ということ



――あと人名で言うと、これは実在の人物ですけど、“This Is Your Land”にウディ・ガスリーが出てくるんですよね。ちょっと驚いたんですけど、前から聴いていたんですか。

「ウディ・ガスリー、好きですね。入り口は20年ぐらい前に観た映画だったんですけど、そこで興味を持って。この曲はウディ・ガスリーの“This Land Is Your Land”からインスピレーションを得て付けたタイトルなので、そこにウディ・ガスリーの名前を放り込むことは僕にとって必然でしたね。ウディ・ガスリーがいちばん最初に、音楽で闘うことを人々に説いて回った人なんじゃないかな?という、象徴的な存在として捉えてますね」

――ボブ・ディランに大きな影響を与えたことでも知られる人ですけど、プロテスト・ソングの巨人ですよね。

「最近Twitterでいろんなことを発信していると、〈ミュージシャンは音楽だけやっていればいい。政治に口を出すな〉とか、〈知識もないのに原発のことを言うな〉とか、たくさん言われたんですね。でも〈逆だろ?〉って思うんです。ミュージシャンであるなら、生っちょろいことばかり言っているのではなく、時には誰かを不愉快にさせたとしても、自分の意見を歌詞やライヴに盛り込んでいくのはあたりまえだし、普通にいち納税者として、国に対して、この国で起こったことに対して意見するのはあたりまえだと思うんですね。〈パン屋さんはパン以外の話をしちゃいけないのかい?〉みたいなことで」

――そういうことになっちゃいますよね。

「そんなふうに、すごくおかしなことがいっぱいあって。そこでウディ・ガスリー……あるいはジョニー・キャッシュ、ジョン・レノンとか、みんな闘ってきたじゃないですか? そういった先人たちの力を借りたかったんでしょうね。〈ロックってもともとこういうものなんだよ〉ということを提示したかったんですね」

――もう一人、“Sold My Soul To Rock’n Roll”のなかにロバート・ジョンソンも出てきます。これも音楽の歴史のなかで象徴的な人ですが。

「なにしろ、クロスロードで悪魔に魂を売ってギターの奏法を覚えた人ですからね。……こう言うと子供じみてて馬鹿馬鹿しいんですけど、ロックのギターを弾いていると、悪魔に魂を売る感覚がわかるんですよ。それを言語化すると、〈政治も宗教も信じない。音楽の世界を信じる〉ということだと思うんですね。僕は実際そうやって生きてきたつもりなので、それをしっかり歌詞に盛り込んで。いまは震災や原発事故や、領土問題や、いろんな問題がありますよね。そういうものに対して〈正解を言わなきゃいけない〉みたいな風潮があって、みんながブレブレになってる。でも僕は、正解は自分で作っていくものであって、反対する人がいて当然だと思ってる。じゃあなぜそこでブレずにいられるか?というと、〈ロックンロールに魂を売ったからだよ〉と。〈あなたもブレたくないんだったら、ロックンロールに魂を売っちゃえば?〉って、ポンと言ってあげたいんですよね」

――あえて、軽い感じで。

「僕もそうやって、ロックンロールに育ててもらった人間なので。自分にとってすごくあたりまえのことを言語化して、若い子たちに伝えたいなと。おもしろおかしく」


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掲載: 2012年11月21日 18:01

更新: 2012年11月21日 18:01

インタヴュー・文/宮本英夫