LONG REVIEW――Ken Yokoyama 『Best Wishes』
筋の通ったメッセージ
11年ぶりのHi-STANDARD再結成と〈AIR JAM〉の開催、さらには〈東北AIR JAM〉と、昨年から今年にかけて精力的に動き続けた横山健がKen Yokoyama名義でリリースする、2年8か月ぶりの5作目。東日本大震災後の初の、そしてドラムスが松浦英治に代わっての初のアルバムである。
〈3.11〉以降人生観も、音楽家としてのあり方も大きく変わったとする横山の熱い思いが込められた全12曲。まず歌いたいこと、伝えたいことを書き出し、それに相応しい曲を書き上げていくという、それまでとは真逆の作り方で制作された。ライヴを一切休止し曲作りに専念したのも初めてのこと。ロックンロールとして、パンクとして最高にエネルギッシュでパワフルなのはもちろんとして、それまでにないほどビシリと筋の通ったメッセージが聴ける。日本が困難な状況にあるいまだからこそ、パンクスは声を上げるべきだとする横山の叫びは、かつてなくシリアスだ。繋がることの大切さ、助け合うことの意義を、群れること、慣れ合うことを何より嫌う横山が歌うからこそ説得力がある。
毎度お楽しみのカヴァー曲は、ポップス・スタンダードの〈愛の讃歌〉。こんな状況だからこそ愛が何よりも大切なのだとする横山のメッセージが込められている。「5年、10年先も聴き継がれるようなものではなく、いまの日本を表した作品であってほしい」と横山は語っていた。2012年のいま、この日本でこそ聴かれるべきアルバムが『Best Wishes』だ。