INTERVIEW(3)――いい意味でのダサさ
いい意味でのダサさ
――今回のシングルには3曲収録されてますが、2曲目の“非公式彼氏(シークレットダーリン)”は付き合ってることを表立っては言えない彼女目線の曲で。これ、曲調は明るいですけど、最後のフレーズが怖いです(笑)。〈殺す覚悟であたしを捨ててね♡〉って、最後に〈♡〉がついてることで恐怖感が増しているといいますか。
「この曲、ギリギリまでこの♡はなかったんですけど、曲が出来てレコーディングして、自分の声を聴いたときに〈これは♡が必要だな〉と思って。♡をつけることでこの曲は完結するんじゃないかと。〈この♡が怖いね〉っていうのはいろんな方に言われるんですけど(笑)」
――でも、その怖さが重要だったんですかね?
「そうですね。曲自体はすごくポップな作りになってると思うんですけど、ただ、最後の最後はガッチリ締めよう、みたいな(笑)。笑顔でいる女の子が、本当は彼に対するそういう気持ちを露わにしてるんだよっていうことを、最後の一言で表現してる感じで」
――この曲に限らずなんですけど、私がさめざめに感じるのは、70~80年代のちょっと陰のある歌謡曲のテイストなんですね。そういう音楽はご自身のルーツにありますか?
「曲を作るんなら、何年経っても色褪せないね、っていう曲を作りたいと思っていて。それで私のなかでは80年代とか、90年代もそうですけど、その当時の曲って子供の頃や思春期に聴いていたっていうのがあるので、いまでもその頃の曲がすごく良かった、って思ってしまうんですね。なので、懐かしさは意識的に重視してますね」
――そこは意識してるんですね。
「そうですね。昔の音楽の良さは、1曲のうちのどこかにモチーフとして入れていきたいなとは思ってます」
――言わば、昭和感といいますか。
「ああ~、そうですね。自分から出てくるメロディーって、その頃に聴いてたものの影響が大きいので、やっぱりそういう匂いがしますね(笑)」
――どういった方を聴いてました?
「掘り返して聴いているのでリアルタイムではないんですけど、山口百恵さんや中森明菜さん、中山美穂さん、小泉今日子さんとか。時代ごとの女性アーティストさんを聴いて、いいなと思ったりしましたし」
――さめざめは、ちょっと明菜さんっぽさがありますよね。
「明菜さんはやっぱり格好良いな、って思いますね。歌詞が格好良い」
――あと、今作は3曲共にピアノの音が効いているアレンジだな、と思いました。
「ああ~、それはたまたまなんですよね。『スカートの中は宇宙』のほうはオルガンとかも入っているんですけど、今回の3曲に関してはたまたまピアノが多くて。ただ、シンセサイザーの音色はそんなに使いたくないっていうこだわりはあるんです。どちらかというと生っぽいピアノとか、オルガンっぽい音とか、いい意味でのダサさがあったほうがいいっていうのがあって、なるべく音色は増やさないで使ってる感じですね」
女の子の実情を曲に
――では、話を歌詞に戻して3曲目の“あの女”ですが、これは歌い出しからかなりパンチがありますね。
「ああ~、曲を作るときはあんまり考えてないんですけど、この曲はもともとタイトル先行で。“あの女”っていう曲を作りたいなって思ったところから、〈じゃあ、あの女ってどんな女なんだろう?〉って膨らませて、〈あの女に対してどういう気持ちなんだろう?〉って思ったら〈ふざけるな〉っていう言葉が出てきたんですよね。で、デモの段階では〈ふざけんな、あの女〉っていうのはなかったんですけど、この曲は最初から鈍器で殴るぐらいの勢いでいったほうがいいだろうなと思って、冒頭からパンチを(笑)」
――まあ、いい印象を持っていたら、〈あの女〉とは言いませんよね。
「そうですね~。なので、タイトルを見た聴き手側は、たぶん〈これは、あんまりいい曲じゃないだろうな〉って思うんじゃないですかね(笑)」
――タイトルの段階から覚悟しておいてね、という宣告を(笑)。あと、この曲は浮気されてるほうの目線で書かれてますけど、きっと浮気相手のほうも彼女を〈あの女〉って思ってますよね。
「お互い〈あの女〉なんだと思うんですよね(笑)。どちらの目線でも、さめざめ的な行為をしているふたりだと思いますし」
――そういういろんな女の子のストーリーを描いていきたい?
「女性の現実的な部分、ホントに嫌な部分に寄ってますけどね(笑)。女の子の実情じゃないですけど、そういうところを曲にしていくっていうのが、いまのさめざめのコンセプトであったりはします」
――女の子の業を書いてる方は他にもいますけど、ここまで性を全面に出してる方ってあまりいなくて。それが今回からはメジャー・レーベルへ移籍ということもありますし、お茶の間でこういう楽曲が流れてるようになったらおもしろいんじゃないかと思いますね。その場のみんなが黙り込みそう歌詞ではありますが(笑)。
「思春期の女の子と男の子とお父さんとお母さんの気まずさっていうのはけっこう計り知れなかったりするので、ご家族の皆さんに申し訳ないと思う気持ちはもちろん持ってるんですけど(笑)。ただ、それは皆さん乗り越えていく部分かとは思うので、そのなかの一つの試練と思っていただければ。さめざめのCMが流れたらTVを消すとか、お母さんが真っ先にチャンネルを変えた、とか。ドラマのラヴシーンと同じカテゴリに入ったら、さめざめはひとつ上のステップに進めたことになるのかもしれないです(笑)」