さめざめ “愛とか夢とか恋とかSEXとか”
[ interview ]
タイトルからしてインパクト大な“コンドームをつけないこの勇気を愛してよ”をはじめ、女の子の隠された生態をつまびらかにしたファースト・アルバム『スカートの中は宇宙』で2012年初頭からさまざまな憶測と話題を呼んださめざめ。性に関するトピックを(も)ポップソングとして提示するシンガー・ソングライター、笛田さおりによるソロ・プロジェクトが、2013年を目前にしてシングル“愛とか夢とか恋とかSEXとか”でメジャー・デビューを果たした。
上述の『スカートの中は宇宙』にも収録されていた今回の表題曲は、自身のアイデンティティーを求めて思考を彷徨わせる女性を主人公に据えたピアノ・バラード。切なさを募らせるメロディーと親しみやすい歌謡性を擁するこの曲は、笛田にとって〈性を歌うこと〉は決して奇を衒ったものではなく、自身のパーソナリティーを表現するために不可欠な手段であることを伝えてくる。
彼女の思う〈女の子の実情〉とは? そして、彼女の音楽的なバックボーンとは——? 笛田さおり本人に訊いた。
自分を押し殺してた
――ソロ・プロジェクト名のさめざめって笛田さんの楽曲にぴったりですよね。どういう閃きで付けたんですか?
「名前を新しく付けようと思ったときに、日本人なので、日本語を大切にしたいなっていうのがいちばんにあって。しかもひらがなで勝負したいなと思ってたのと、あとは名前からイメージが広がる感じがいいなと思って。さめざめって、辞書で引くと〈声を押し殺して泣く〉みたいな意味なんですけど、その言葉を聞いただけで〈切ない〉とか〈哀しい〉みたいなイメージが湧いてきますし、曲自体もそういったものが多いので、さめざめだったら聴いてくださる方々も曲をイメージしやすいんじゃないかなって」
――さめざめとして活動を始めるまでは、お一人で活動されていた?
「はい。バンドをやったり、一人で活動したりいろいろと」
――では、さめざめという名前でやっていこうって思ったのは、どういうきっかけで?
「それまでもいろんな方向性でやってたんですけど、こういう言葉を入れたら引っ掛かっちゃうとか、不快に思われるとか、あと万人ウケとかメジャーでのリリースとか考えずに、表現したいものを出し切ろうと思って始めたのがさめざめで。それって自分の音楽的な人生としては賭けだったんですけど、そういったものをやりたいなと思ったのが4年とか5年前で、その準備が3年ぐらい前にやっとできて、始めた感じですね」
――表現したいものって、女の子の業みたいなものですか?
「ああ、そうですね。女の子の醜い部分も、可愛いらしい部分も、綺麗ごとでまとめられていない感じの表現ですね。例えば他の方の曲でも、自分ならこう書きたいな、って思うこともあったので、それをそのまま表現したいなって」
――笛田さんって、もしかして過去に職業作家みたいな活動をされてます?
「あ、してます。作詞をしてました」
――作風から〈もしかして……〉と思ってました。ちなみにどういう方に書かれてました?
「もう活動されていない方も多いんですけど、いちばん有名な方だとMAXさんの曲で書かせていただきました。作曲がBEGINの方で、沖縄民謡みたいな曲で」
――女の子に書くことが多かった?
「女性のみですね」
――そのときの、笛田さんに対するオーダーってどのようなものでした?
「それがですね……たぶん、いまさめざめをやってるのはそこから始まってるところもあるんですけど、職業作家としての活動では、自分を押し殺してたんですね。これは書いちゃダメ、あれは書いちゃダメ、とか、それですごい勉強させていただいて。なので、そのときは要望通りに……でも自分らしく、みたいなものは入れてるんですけど、たぶん聴いてもさめざめの人と同一人物とは思えないよね、っていう感じだと思います。とても綺麗で、美しい作品を書いておりました(笑)」