INTERVIEW（3）――初期衝動が大事

初期衝動が大事

――既成のソングライティングのスタイルを壊したい、新しい曲作りを提案したい、という思いはありますか?

石神「う～ん…………」

――普段の生活のなかで自然に耳にする出来合いのポップスを聴くと、もっと自由でありたいと思うとか?

石神「そう思う気持ちはあっても、結局、好きで聴いている音楽とかは同じだったりするわけですよね。それが〈ロマンティック〉って感覚で繋がってくるのかなって思いますね。やってるほうとしては別のものを作りたいと思っていても、客観的に見ると同じだ、みたいなね」

――そこにオリジナルなことをやっているんだ、と信じるある種のロマンですね。

石神「そうです。１つのリフにこだわって、どんどん発展させていっても、結局最初のリフがいちばん良かったりするような感覚も近いのかもしれないです。特に、前のアルバムはそういう遠回りをたくさんしたような作品だったんです。だから、今回はその遠回りをできる限りなくしたいと思って作ったんですけど……でもやっぱり遠回りをしてしまう。ただ、その遠回りも決して無駄ではないんですよね」

岩本「僕ら、ミキシングも全部自分たちでしてるんですよ。それも知識とかなく一つ一つ確認しながらやってるんで、同じことを二度と再現できなかったりするんです。すごい遠回り（笑）。でも、それがおもしろかったりするんですよね」

小林「作った本人がどこ弾いてるかわからない、同じリフを二度と出せなかったりすることもよくあります（笑）」

石神「そうやって出来た音源のかき集め、みたいなのがHOTEL MEXICOです（笑）。どんな時も常に録音していないとダメみたいなところもありますね。だからこそ〈これ!〉というのをキャッチしないといけないんですよね……こんな僕らがなぜイイと言われるのかわからないですよ（笑）」

――だって、もっとイイと言われたいんじゃないんですか?

石神「言われたいんですけど、何がいいんだろうなあ?って（笑）」

――キャリアを重ねると、どうしたって技術も上がってきますよね。知識もついてくるし、合理的にもなっていく。そういうなかで、いまのような自由で偶発的な作り方をキープするのは、これからがむしろ大変かもしれないですね。

石神「そうなんですよ。初期衝動、大事なんですよね。だから、僕自身はなるべく細かい技術、例えばエフェクトのかけかたとかは覚えないようにしています。他のメンバーにそのあたりはお任せして、僕は初期衝動をキープできるようにしていますね。そもそも初期はエフェクト類もほとんど使用していなかったんです。せいぜいオーヴァードライブくらいでしたよ（笑）」

岩本「僕はドラムなんですけど、ギターのエフェクトを考えたりしてるんです。そのくらい自由に行き来してるんですよ」

菊池「だからって、ヘンなことをやって目立ちたいというのもないんですよね」

――では、いつかはスタジオでセッションしながら曲を作ってみたい、という欲求は?

小林「やっても曲としてまとまらないと思いますよ～（笑）」

石神「やっぱり各々に任せて作っていきたいですね。そのほうがおもしろいものが作れるんじゃないかな」

――クリエイターが6人集まってる、というイメージ?

岩本「そんないいものではないですよ（笑）。スタジオに集まったりしても、それは音楽を作るためというより、ただ音で遊びたいからなんですよね。6人で集まってワイワイしたいって感じですからね。そもそも本チャンの録音も家の土間で音を出して、それを録音しているわけですからね。スネア置いて、マイク置いて……」

――町中の一軒家でしょ?　苦情来ないんですか?

石神「防音してないんですけど、まだ苦情来ないですね。苦情来たら考えようかと思ってますけど、それどころか、町内会長さんが、〈いつライヴやるんだ、早くやって呼んでくれ〉って言ってますよ（笑）!」