LONG REVIEW――フジファブリック “Small World”
ここではないどこかへ
端から個人的な話で恐縮だが、彼らの〈セカンド・シーズン〉を特に注意深く追っていたわけではなかったのだけど、CSの音楽チャンネルを流しっぱなしにしていると、その個性的なメロディーラインや〈ここではないどこか〉へ連れてってくれるサウンドの佇まいに、思いがけず心を引っ張られることがあった。実を言うと、昨年リリースされた“徒然モノクローム”“流線型”“Light Flight”といったシングル曲のタイトルもうろ覚え……なのだが、いずれもよく知った曲。たぶん、そうやってうかつにフジファブリックの音へ耳を惹かれていった、4人時代を知らないファンも多いことだろう。
3月に控えているニュー・アルバム『VOYAGER』に向けて、最後の予告編となるニュー・シングル“Small World”。まず、宇宙開発をテーマにしたTVアニメのオープニング・テーマというのが、また〈ここではないどこか〉へ連れてってくれる――楽曲のそこかしこにスペイシーなニュアンスを醸し出してきた彼ららしい……というのもありつつ、マーチング・バンド風情の疾走感と昂揚感を湛えたビート、天空を駆け上がっていくようなメロディーもまた、彼ららしさの極みだ。ざっくりと言えば〈前向きソング〉の類なのだが、無闇に奮い立たせるのではなく、自身の〈なっちゃなさ〉も享受しながら、でも〈やるときゃやるぞ!〉みたいな……。
カップリングに収められた“Time”は、かの名曲“若者のすべて”にも通じるサウンド観を持ったナンバーで、繊細に刻まれるギターのリフレイン、そこに挿まれるセンチなピアノ、ゆるりとしたテンポ感が、茜色――ノスタルジックな風景を見せてくれるハートフルな逸曲。あえて言うまでもなく、アルバムが楽しみになってくる。
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