インタビュー

INTERVIEW(2)――成長した自分に気付ける瞬間



成長した自分に気付ける瞬間



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――どんなときに成長した自分に気付くんですか?

「例えば相手の人とケンカして、〈こういうことを言われたとき、前だったら絶対に怒ってたな〉って思ったり。そういう場面でも、もうひとりの自分がちゃんと俯瞰で見ていて、〈ここで私が怒ると話をこじらせちゃって、解決したいことが伝えられない。ちょっと待とう〉みたいなことを考えられるようになってきたんですよね。〈いまの私はこういう状態なんだな〉って冷静に見ることができるというか――それがとってもセンセーショナルだったの、私にとって。ああ、自分は変わろうとしてるんだなって」

――でも、その恋愛を失ってしまった、と。

「そう。だから終わったときの傷は根深かったよね。もしかしたらそれは彼に対する愛情ではなくて、いろいろと気付けて楽しかった恋への執着があったかもしれないけどね。この歌のなかでも〈愛しさ手放すことは/ただ見送るよりも苦しいです〉って歌ってるんだけど、ホントにそんな感じでした」

――阿部真央さんにとっては、恋愛が本当に重要なファクターになってるんですね。音楽においても、人生においても。

「そうですね。もちろん歌も大事だけど、恋愛のほうがもっと大事っていうタイプなので(笑)。そっちに傾きすぎたり、恋愛に夢中になって仕事を疎かにすることはないんだけど、そこ(恋愛)がスコンと抜けてしまうと、いろんなことが上手くいかなくなるんですよ。逆に恋愛が安定してると、精神的にもすごく良いし。人とのコミュニケーションの取り方、人間関係の作り方において、すごく勉強できる場所ですよね、私にとっては」

――なるほど。“最後の私”は、メロディーの構成においても〈新しい阿部真央〉を予感させる楽曲だと思っていて。

「うんうん。曲を書いたときはね、いままで通りというか、すごく自然だったんですよ。最初の4行のメロと歌詞がいっしょに出てきて、そこから歌詞とメロディーを同時に進めていって。ただ、サビのメロディーの展開はいままでになかった感じかもしれません。私自身もとても気に入ってる展開だし、こういうのが書けて良かったなって思います。いま聴き直してみても、グッとくるしね。なぜこうなったか?っていう理由はわからないんだけど(笑)」

――例えば新しいコード展開を試してみたとか、転調の方法を学んだとか……。

「全然(笑)。基本的には思いのままに書いてます。もうちょっと考えろよって自分でも思うけど、勉強のために音楽を聴きまくるタイプでもないし。でも、最近作ってる曲でも――まだデモも録ってない段階だけど――いままでにない転調をすることがあって。何かね、そういうのが自分のなかで気持ちいいみたい。“最後の私”はね、アレンジもすごく好きなんです。音の配置やヴォーカルのバランスを含めて、聴いててとっても心地いい。楽曲の世界観をしっかり引き出せているし、クォリティーは高いと思いますね。年末の弾き語りライヴで2回歌ったんですけど、それも良かったんですよね。1回でもライヴで歌うと、歌入れもやりやすいんです」



ちゃんと人に届く力がある曲



――ライヴで歌ったときの手応えはどうでした?

「良かったです。特に12月24日に東京でやったときは、いい手応えがありました。新曲を歌い終わったときって、一瞬、沈黙があるじゃないですか。そのときに〈歌に聴き入ってくれたな〉という感じがあったんです。こっちをずっと見てくれていたし、鼻をすする音も聞こえてきて。バラードだけど退屈させることもないし、ちゃんと人に届く力がある曲なんだなって思えました」

――ライヴにおいてもすごく冷静に見てるんですね。それもさっき言ってた〈成長した自分に気付ける瞬間〉だったりするんですか?

「あ、多少はあるかもしれないですね。どっちかっていうと面倒臭がりで気が短いんですよ、私(笑)。だけど、面倒がらずに伝えるべきことは伝えなくちゃいけないし……。あとね、いろんなことに気付きすぎるところがあるんです。そこで勝手に落ち込んだりすることもあるから、〈自分が気にしすぎてるだけで、他の人にとってはどうってことない。傷付くようなことじゃないよ〉って自分に言い聞かせてみたり。そういうことはやってますね、心のなかで。まあ相変わらずイラッとすることもあるんだけど(笑)、そのときも〈しょうがない〉って割り切って、その気持ちを誰にもぶつけないように黙ったりとか。要するに感情のまま動きすぎてたんです、いままで」

――感情を抑制することができつつある、と。

「それは感情を殺すということではないし、何でも機械的に考えているわけでもなくて、もっと普通に〈こういう言い方はイヤだよね〉とか、そういう感じなんですけど。とは言っても、まだ明確になっているわけではないんです。日々起こる出来事のなかで、こういう場合はどうしたらいいだろう?って答えを探して、実際にやってみるっていう」

――音楽活動においても同じことが言える?

「うん。結局はみんなで作ってるしね。1曲作るだけでもたくさんの人に協力してもらってるし、こういうインタヴューだって、いろいろな人が関わってる。自分ひとりでやるのは曲を書くときくらいで、あとはいっぱいの人に助けてもらってる――それはすごく感じてますね、改めて」

――おぉ、大人ですね!

「ええ、23歳ですから(笑)」



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掲載: 2013年03月06日 18:00

更新: 2013年03月06日 18:00

インタヴュー・文/森 朋之