INTERVIEW(3)――いまの視点から生まれることを自然に表現していきたい
表現の幅が広がった
――カップリングの“短い言葉たったそれだけその一言だけ”についても聞かせてください。阿部真央さんのベーシックなスタイルであるアコギの弾き語りですが、言葉のスピード感が気持ちいい曲だな、と。
「ありがとうございます。最初は弾き語りにするつもりはなかったんですけど、ディレクターさんが〈アコギだけのほうがカッコ良さが伝わるんじゃない?〉って言ってくれて。超大変なんですよ、このギター。ずっと強くストロークしてるから、手が痛くなるっていう(笑)。歌詞に関しては言葉遊びの要素が強いというか、別に怒ってるわけではないんですけどね」
――誰かの言葉に傷付いた経験を歌ってるんじゃないんですか?
「うん、全然(笑)。さっきも言ったように気にしすぎる性格だから、〈たったひとつの言葉で深く傷付くこともある〉という意識はいつもあるし、実際にそういう場面に出会うこともあるんです。ただ、この曲に関しては最初のフレーズ(〈短い言葉たったそれだけその一言だけ〉)がスラスラ出てきて、歌ってて気持ち良かったんですよね。複雑に揺れ動く気持ちも入ってるんだけど、ただ怒ってるだけの歌ではなくて」
――以前だったら、怒りを思い切りぶつける曲になったかもしれないですね。
「そうかもしれない。何て言うか、表現の幅が広がった感じもあるんですよね。例えば怒りの感情があったとして、いままではそれをダイレクトに出すだけだったのが、もうひとつ〈この気持ちを使って、遊び感覚で曲を作ってみよう〉という方法も加わって」
――なるほど。曲を書くのもさらに楽しくなったんじゃないですか?
「楽になるよね。もちろん全然できない……ってこともあるんだけど、前よりは焦らなくなったし。〈いままでも乗り越えてきたじゃない?〉と思えるようになったし、〈こういう方法はどう? こういうやり方もあるよ〉って順序を踏みながら、落ち着いて考えることができるようになって」
――実際、アルバムの制作のたびに生みの苦しみを経験してきわけですからね。
「まあね(笑)。本当に曲が出来ないときはディレクターさんに相談するし。いまはストック曲も増えてきてるから、そのなかから〈この曲の発信の方法を考えてみよう〉っていう話もできたり……まあ、ストックがなくなったら何て言われるかわかんないけどね(笑)。そういうことも含めて、全部をわかってもらえてる気がするというか」
いまの視点から生まれることを自然に表現していきたい
――いろんな意味で視野が広くなったというか、〈気付き〉が多い時期なんでしょうね。ただ、恋愛してないとだんだん不安定になっていく心配が……。
「(笑)。そう思うじゃないですか? でもね、いまはわりとフラットでいられるんですよ。そういうことに関しても焦ってないというか、結構安定してるんですよね、なぜか。もちろん恋はしたいですけどね。好きな人がいたほうが楽しいじゃん」
――恋愛以外に熱中できるものを見つければいいんじゃないですか? お菓子作りとか。
「ないない、面倒臭いよ、そんなの(笑)。でも、趣味がいっぱいある女の人って恋愛に依存しないかもね。私には何もないから大変なんですよ。恋愛すると重いよ~」
――(笑)。音楽をマニアックに聴くタイプでもないし。
「そうですね……。あ、でもこの前の誕生日のときに事務所のスタッフから音楽ギフトカードをもらったから、最近は結構聴いてます。まずテイラー・スウィフトでしょ、あとアデルも好き。超カッコイイよね」
――自分の音楽性に採り入れたいと思ったりします?
「うーん、どうかなあ。私の場合はもうちょっとポップになるだろうし……。メロの展開とか音作りとか、そういうことってよくわからないんですよね。それよりも歌詞と声がいいなって思ってるから。アデルにしても、ピアノと歌とか、ギターと歌だけとか、やっぱり弾き語りがいいなって思います。本物って感じがする」
――やっぱり歌を中心に聴いてるんでしょうね。最後にこの後の活動についても少し教えてもらえますか?
「具体的なことはまだ決まっていないんだけど、少しは人間として成長できてると思うし、いまの視点から生まれることを自然に表現していきたいな、と。そのうえでファンの人たちにも喜んでもらえる活動ができたらいちばんいいですよね。“最後の私”を作ったことで、自分のなかで何かが変わろうとしてるなって思えたんですよ。その状態をしっかり感じながら、活動していけたらなって。ただね、〈ガンガン行きます!〉っていうモードでもなくて。いろいろと探りながら、自分自身をちゃんと見ていきたいですね。30歳になったとき、いまよりももっと楽しくて、もっと自由でいられるようにがんばりたいです。7年かけて(笑)」
――まだまだ先だと思いますが。
「いやあ、結構あっという間かもよ。楽しみなんですよね、30歳になるのが。歳を重ねるとどんどん楽しくなるよって、うちの母も言ってたので(笑)」
――(笑)。でも、リリースのたびにすごく変化していきますよね、阿部真央さん。18歳でデビューしたときなんて……。
「〈どうせ売れないですよ、私なんて〉って言ってましたから(笑)。あのときに比べるともっとちゃんと生きようとしてるのかもね、いまは」
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