インタビュー

PALMA VIOLETS 『180』



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写真/オーウェン・リチャーズ



ストーン・ローゼズやブラーの再結成など、レジェンドたちの話題で持ちきりな昨今のUKロック・シーンですが、そんななか頼もしい若者が殴り込み! ラフ・トレードの創設者であるジェフ・トラヴィスが1曲聴いただけで骨抜きにされ、持ち曲がたった4つしかなかったにもかかわらず、すぐさま契約交渉を開始、その勢いのままアルバム・デビュー前にしてNMEの表紙に2度も登場し、BBCの〈Sound Of 2013〉にも選出されたロンドン出身の4人組、パーマ・ヴァイオレッツであります。で、このたび彼らが注目のファースト・アルバム『180』を完成させました。

日々のやるせなさを大声で叫ぶツイン・ヴォーカルと、ソリッドなギターを核としたシンプル極まりないロックンロール・サウンドが彼らの持ち味。危うさと色気を纏ったその姿に、どうしても同じレーベルに所属するストロークスやハウラーらの登場時を重ねてしまうのですが、なかでもリバティーンズはたびたび引き合いに出されていて……正直うんざりしているんじゃない?

「リバティーンズの音楽を聴いて育ったから、別に比較されるのは嫌じゃないね。彼らのことは大好きだし、偉大なバンドだと思ってる。でも僕らのサウンドがリバティーンズと似てるとは思わない。だって、立って演奏して歌っているのは僕とサム(・フライヤー)だけだし。同じラフ・トレードに所属しているのも比較される原因のひとつだとは思うけど、僕らはまったく別のスタイルを持つバンドなんだよ」(チリ・ ジェッソン:以下同)。

破天荒な言動で知られるピート・ドハーティ先輩に比べ、ずいぶんと大人な対応で安心しました。それはさておき、彼らが本格的にバンド活動を始めたのは2011年のこと。そもそもは、顔見知り程度だったメンバー同士が〈レディング・フェス〉で鉢合わせたことがきっかけだそうで……。皆さん、さぞかし大物/人気アクトのライヴに感化されたのでしょうね。

「いや、正直なところフェスの会場ではずっとパーティーをしていて、あんまりライヴには興味なかったんだ(笑)。まあ、何を観たかと訊かれれば、レディオヘッドって答えになるかな」。

そういえば、昨年ヒットを記録したパーマ・ヴァイオレッツのファースト・シングル“Best Of Friends”も、〈友達と集まってパーティーするときの音楽〉がテーマに掲げられていましたっけ。そんな不真面目に(!?)音楽を楽しむ小僧たちをプロデューサーとしてきっちりサポートしたのが、パルプのベーシストであるスティーヴ・マッケイ。短期間でここまで注目されるバンドに成長した裏には、彼の存在が大きかったはずです。

「スティーヴは最高だよ。もともとパルプの大ファンで、彼をスターだと思っていたんだ。僕もベースを演奏しながら歌うし、スティーヴからはいろいろな自信をもらった。彼のおかげでスタジオ作業はとても楽しかった。素晴らしかったよ」。

ちなみに、憧れのスティーヴ本人も〈本能的で、カリスマ性といまにも爆発しそうなエネルギーがあって、まったく予期できない。アイツらが演奏する場所では、何かが起こるんだよ! バンドのケミストリーは素晴らしいね。全員が何か持ってるよ。アイツらは稀に見る真のバンドなんだ〉とコメントしているのですが、確かに『180』にはバンドの凄まじい熱量と、〈何かが起こりそうな予感〉が満ちています。では最後に素晴らしいスタートを切った彼らの、今後の展望を尋ねておきましょうか。

「個人的にニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズが好きなんだ。僕らも彼らのようにアルバムを続けて何枚もリリースしていきたいと思っているよ。それともうひとつの目標はクラッシュだね。ああいうバンドになるのが夢なんだけど、なかなか難しいよね。時代も違うし、バンドをやることがだんだん難しくなっているし。とにかく僕らはがんばるしかないのさ」。

パーマ・ヴァイオレッツがその目標を達成できるかどうかは誰にもわからないけど、少なくとも僕は〈リバティーンズが描いた夢の続きを見せてくれるかもしれない〉と彼らに期待を寄せています。



PROFILE/パーマ・ヴァイオレッツ


サム・フライヤー(ヴォーカル/ギター)、チリ・ ジェッソン(ヴィーカル/ベース)、ピート・メイヒュー(キーボード)、ウィル・ドイル(ドラムス)から成る4人組。もともと同じ学校に通っていた彼らが〈レディング・フェス〉で遭遇して意気投合。それがきっかけで2011年にバンドを結成する。2012年にはラフ・トレードと契約を結び、8月にファースト・シングル“Best Of Friends”を発表。同曲がNMEの〈Song Of The Year For 2012〉に選ばれたほか、BBCの〈Sound Of 2013〉にもノミネートされて大きな注目を集める。2013年2月には〈Hostess Club Weekender〉で初来日。このたび3月6日にファースト・アルバム『180』(Rough Trade/HOSTESS)をリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年02月27日 17:59

更新: 2013年02月27日 17:59

ソース: bounce 352号(2013年2月25日発行)

構成・文/白神篤史