インタビュー

LONG REVIEW——cali≠gari “春の日”

掲載: 2013年04月03日 18:00

更新: 2013年04月03日 18:00



87年への挑戦と大衆性のあり方



cali≠gari

以前BUCK-TICKの〈PEOPLE TREE〉のコラムでも書いたが、cali≠gariが今回のニュー・シングル“春の日”でカヴァーした岡村靖幸“Dog days”のリリース年となる87年は、BUCK-TICKが初作『HURRY UP MODE』とメジャー初アルバム『SEXUALxxxxx!』を発表した年であり、かつ、その前後はいまもカリスマ的な存在感を放つ個性派のアーティストが多く活躍した時代。そしてそれは、各々異なる嗜好を持つcali≠gariの2人のソングライターのルーツが交わるポイントであり、本作に収録された4曲をやんわりと統一するムードでもある。

7インチ盤とCD盤の2形態で登場した今作の表題曲は、桜井青のペンによるもの。最新アルバム『11』(2012年)で言うなら“最後の宿題”“東京、40時29分59秒”などと通じる映像喚起力の高い詞世界を前面に押し出したミディアム・ナンバーだ。軽やかに疾走するビートと可憐に躍るシンセのフレーズに〈花風の町〉〈桜闇〉といった桜井らしい言葉をふわりと乗せ、散っては舞い上がる花吹雪のなかに切ない別れの情景を封じ込めたcali≠gari流の桜ソングとなっている。

そして7インチ盤のカップリングに収められたのは、石井秀仁が手掛けた“ウォーキング! ランニング! ジャンピング! フライング!”。BOOWYを彷彿とさせるシンプルかつ硬派なビート・ロックを下敷きに、清涼感のあるシンセとコーラスワーク、十八番の難解な漢字使いに暗喩を忍ばせた歌詞が、石井特有のエレガンスと毒を振り撒くポップ・チューンだ。

またCD盤には、桜井が“ウォーキング! ランニング! ジャンピング! フライング!”を受けて書いたという“ミッドナイト! ミッドナイト! ミッドナイト!”と、上述の“Dog days”のカヴァーをパッケージ。当時のヤンキー文化と歌謡ロックをモチーフにした前者は、詞の一部を借りれば〈チープなスリルで風になれ〉を地で行く異様にキャッチーな楽曲。一応(失礼)失恋ソングではあるが、猫も杓子もツイストを踊り出しそうな(?)ライトなアゲ感でひと息に駆け抜けるという、〈ザ・ジャパニーズ80s〉とでも言うべき弾けぶりがいっそ清々しい仕上がりだ。

続く“Dog days”は、煌めく真夏のワンシーンを切り取った原曲のムードを基本的には踏襲しつつ、よりコンパクトでタイトなバンド・サウンドに変貌。ハイテンションな石井の歌唱と、オリジナルではPSY・SのCHAKAが担当した女声パートで登場する桜井の歌も聴きどころだろう。

そう、本作から感じ取れるのは、2人の〈日本の80年代のメインストリーム〉に対するリスペクトと、深い造詣である(その深い造詣が暴走している例もあるが)。また、そこにトライするということは長く愛される強度を持ったポピュラー・ミュージックへの挑戦でもあり、それは、特に2011年以降のシングル群で見せてきた〈シンプルで良い曲であること〉に対するバンドのシビアな視線の〈その先〉とも言えるかもしれない。デフォルメされたポップネスがまず耳に飛び込んでくるものの、本作は、メンバー各々のプレイヤーとしてのスキルやキャラクター自体が飛び道具的であるというバンドの強烈なカラーを活かしつつ、cali≠gariとしての大衆性の有り様を一歩前に進めた作品ではないかと思う。


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文/土田真弓